1798年のアイルランド反乱(The 1798 Rebellion)とは1798年にアイルランドの政治結社「ユナイテッド・アイリッシュメン」が先導したイギリス政府への反乱です。
フランス革命の影響を受け、イギリスから独立すべくフランスと手を組んで起こした反乱で、反乱から200年にあたる1998年にはフランスとアイルランドの友好200年を記念してフランスの国民的自転車レース「ツール・ド・フランス」がアイルランドで行われています。
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18世紀後半のアイルランドは名目上は独立国でしたが、事実上は英国の支配下にありました。
カトリックの権力を奪い、アイルランドを新教徒「プロテスタント」の国にするために制定された「カトリック刑罰法(The Penal Laws)」によってカトリック教徒は差別され、カトリックは土地を所有する権利や選挙権などの公民権は与えられていませんでした。
1789年のフランス革命がもたらした新しい「民主主義」の思想はアイルランドのカトリック階層にも影響を与えました。1791年にはベルファストでセオバルト・ウルフ・トーン等が中心となり、アイルランド人の団結と英国からの独立を目指すグループ「ユナイテッド・アイリッシュメン」が結成されました。
アイルランドの人気バラッド・グループ「ウルフトーンズ」。
1798年のアイルランド反乱のリーダーの名前がグループの由来
ユナイテッド・アイリッシュメンの紋章。
アイルランドの国の紋章でもあるアイリッシュハープが使われています。
ユナイテッド・アイリッシュメンはアイルランドの独立の手段として、フランス軍の武力介入が不可欠と考えました。1796年12月、フランスの侵略艦隊が1万4千の兵力を乗せてアイルランドに到着したのですが、悪天候で兵士が上陸できなかったため、最初の反乱の計画は失敗に終わったのでした。
それ以来、イギリスはユナイテッド・アイリッシュメンの弾圧に力を入れました。グループにスパイを送り込み、報償を与えてさかんに密告を奨励し、逮捕者には過酷な刑罰を科しました。
1798年には、ユナイテッド・アイリッシュメンの指導者の多くは獄中にいて、組織は壊滅していると思われていました。しかしその年の5月、突如としてユナイテッド・アイリッシュメンは立ち上がります。ダブリンで武装蜂起したのを皮切りにアイルランド各地で反乱を起こしていきました。
ダブリン近郊で起こった反乱はたちまち政府軍に鎮圧されてしまいましたが、ウェクスフォードでの戦いには勝利しました。
その後反乱はアイルランド北部にも広がりました。現在の北アイルランドのアントリム州で蜂起がありましたが、この戦いでは敗北を喫してしまいます。
その後ユナイテッド・アイリッシュメンは隣のダウン州に集結してして反撃を試みましたが、ベルファスト近郊のバリーナヒンチの戦いで、数百人の戦死者を出して敗北してしまいました。
結局アイルランド北部の反乱は失敗に終わり、政府軍は兵力をウェクスフォードに集結させました。1798年6月には政府軍は2万人の兵力を投入してウェクスフォードの反乱軍を壊滅させました。これにより、アイルランド南部の反乱も実質上の終結となったのです。
政府軍はこれらの戦いを戦争ではなく反乱の鎮圧と見なしていたので、敗北した反乱軍兵士は戦争捕虜と扱われることはなく、捕えると即刻処刑しました。反乱軍のリーダーたちの処罰は凄惨を極めました。彼らは首を刎ねられ、生首は杭に刺されて街の広場に飾られました。公開の拷問の末、絞首刑に処されたり、死体を教会の前で焼かれたケースもあったそうです。
反乱は悲惨な結末を迎えたかに見えたのですが、これで終わりではなく、1798年8月22日、1,100名のフランス軍がユナイテッド・アイリッシュメンの援軍としてアイルランド北西部のメイヨーに上陸したのでした。フランス軍を味方につけたユナイテッド・アイリッシュメンは最初の戦いこそ勝利したものの、たった千数百人の兵士では勝ち目はなく、9月8日にはあっさりと降伏してしまいました。イギリス政府はフランス兵については名誉ある戦争捕虜として扱いましたが、アイルランド人兵士は例外なく処刑されました。
こうして、反乱は終わりを遂げ、たった数ヶ月間の戦いにもかかわらず、規律のない掠奪と相次ぐ焼き討ちにより、アイルランドの農村の多くが壊滅状態となりました。最終的なアイルランド人の死者は3万人と言われています。(政府軍の死者は600人ほどだそうです)
英国はこの機会を利用し、1801年には正式にアイルランドをイギリスに併合し、その支配は1921年まで続くのでした。
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