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バレン(Burren)はアイルランド西部のクレア州の北西部に位置する、石灰質の岩の露出した土地の広がるエリアです。
「バレン(Burren)」とは不毛の地をを意味するそうで、木がほとんど生えていない岩ばかりの光景に、かつてアイルランドに攻め込んできたクロムウェルは「拷問にかけるために吊す木もなければ、溺れさせる水もなく、埋める土もない」と言ったそうです。
そんな何もないようなバレンですが、周辺には「巨人のテーブル」として知られるプルーナブローンのドルメンや、モハーの断崖などアイルランドを代表する観光地が多くあり、一年を通して多くの観光客が訪れるアイルランドの人気観光スポットとなっています。
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バレンといってもその範囲はかなり広いので、一日で全てを歩くのは相当の健脚でないと難しいと思います。
観光案内所にウォーキングマップとかあるかもしれませんが、特に決まったモデルコースというのがあるわけでもないので、好きなところを好きなように歩くのが手っ取り早いと思います。
個人的には10kmくらいのショートコースを自分でアレンジして歩くのが好きです。
Gleninagh Mountain(グレンアイナ山?)*はバレンの北西に位置する317メートルの山です。
クロムウェルが言ったとされる「拷問にかけるために吊す木もなければ、溺れさせる水もなく、埋める土もない」という岩ばかりの「バレンらしさ」を味わえると思います。
*Gleninaghの発音は自信が無いのですが、glen+inaghでグレンアイナかグレナイナか、そんな感じだと思います。inaghは単体だと「アイナ」と読むのですが、glenが付いているので、グレナイナになるのかもしれません・・読み方違っててもグレナイでね。
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朝フィークルを出てクレア州の州都エニスを経由し、まずはコロフィンへと向かいます。コロフィンはバレンへの入り口とも言えるクレア州北西部の小さな村です。
コロフィンのメインストリート沿いのハードウェアショップのショーウィンドウです。ハードウェアショップ(hardware shop)とは日本の金物屋さんに近い感じのお店です。個人経営のホームセンターみたいな感じです。
コロフィンのちょっと先に「インチクィン湖(Lough Inchiquin)」という湖があります。
アイルランドを代表するハープ奏者/作曲家のオキャロランが作曲した曲の中に「ロード・インチクィン」という曲があります。
この湖はオキャロランが曲を捧げたインチクィン伯爵の家族が代々所有してきた湖だそうです。
インチクィン湖の北西のR476とR480*が分かれる交差点のところにあるレーマナー城(Leamaneh Castle)。リズドゥンバーナやバリーヴォーハンに行くときに必ず通る所なので、しょっちゅう見ている城なのですが、今だに詳しいことは何も分かりません。「バリーヴォーハンに行くんならあの城のところを右だったよね。」みたいな感じで、ほとんど道しるべとしてか認識していない城なのです。
*アイルランドの道路の種類のひとつ。数字の前にRが付く道路は「Regional Road」の略で、日本の県道に相当します。
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バリーヴォーハンの村を経由してバレンの最北端のブラックヘッド方面を目指します。
バレン最北端のブラックヘッドには灯台が建っています。
Gleninagh Mountainへの登山口はこの灯台のちょっと手前(バリーヴォーハン寄り)にあります。
バレンの、海に面して生えている木。この辺に生えている木はみんな斜めに生えています。常に海側の一方向から風を受けているので、斜めに育ってしまうのです。
登り始めてしばらく行ったところで振り返ると「Gleninagh Castle」という城が下に見えました。
バレンは岩だらけと思っていましたが、この辺は以外と土があります。
下を見たら昆虫がいました。昆虫は昆虫でも甲虫に属する昆虫です。
甲虫をアイルランドで見る機会は意外と少ないです。
甲虫の居た所の近くには、ロバも居ました。
ロバは人懐っこいので、人を見るとすぐに寄ってきます。
この辺りからだんだん「バレン」らしくなってきました。
ケルンがありますが、頂上ではありません。地図には載っていない*のですが、なぜか途中にケルンがありました。前に見えるのはゴールウェイ湾(Galway Bay)です。そのさらに先にはコネマラの山々も見えます。
*日本の国土地理院に相当するアイルランドのオードナンス・サーベイ社が発行している地形地図だとケルンがある所はたいていケルンがあるという印が付いています。
ほどなくしてGleninagh Mountainの頂上に到着。
ここまでの道のり。
登山口からここまでの距離は2.23km、所要時間1時間14分でした。
Gleninagh Mountainの頂上まで歩いただけで引き返してしまうのは勿体ないので、しばらく月面散歩を楽しみます。
写真だけだとバレンの上を歩くってどんな感じか分からないと思いますので、バレンを歩いている所を動画で撮ってみました。(長さ約30秒位です)
歩きながら撮っているので、手振れがひどいのと、風の音とか入っていてちょっとうるさく聞こえますが、月面を歩いているような感じがお分かりいただけるのではないでしょうか。
石を積み上げて作った塀?でしょうか?農地の分けるためのものだと思いますが、不揃いな石を上手く積み上げて作られています。
アイルランドにはこういう塀を作る専門の職人さんが居るそうです。
よく崩れないなって感心してしまいます。
不思議な物体?を発見。小屋でもないし、ケルンでもないし、風よけか何かに使うのか、とにかく正体不明な所がありました。
上の正体不明な石積みの近くには、別の正体不明の石を積んで作ったオブジェがあります。
ただ石を積み上げて作ったものではないことは明らかななのですが、何のために、誰が作ったのかは不明です。
上のオブジェがほどなく進んだところに、Gleninagh Mountainの北西にある314メートルの名前のない山があります。
ここまでの移動距離4.34km、所要時間2時間6分。
Gleninagh Mountainの隣の山の頂上からアラン島が見えました。
多分アイルランド島寄りのイニシア島ではないでしょうか。
再びGleninagh Mountainの方へと戻り、今度は山の東側の方に目をやると、大きな谷間になっていて歩くのはちょっと大変そうな感じでした。
バレンの岩山と岩山に挟まれた谷間は緑があって、谷間を突っ切る道路が通っています。
谷間の中にも石積みの塀が繋がっています。
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スリーヴ・エルバ山はバレンの最高地点となる山です。
Gleninagh Mountainからそう遠くないので、ついでに登ってみました。
スリーヴ・エルバ山はバレンの中では珍しく、辺りを森(植林樹林)で囲まれていて、地面は石ではなく泥炭質な柔らかな土の地面が広がっています。
スリーヴ・エルバ山は山頂の近くまで道路が通っていて、簡単にアクセスすることができます。
歩きはじめは植林樹林帯を歩きます。
ここがスリーヴ・エルバの山頂、バレンの最高地点です。
山頂の辺りは泥炭質な土地で他のバレンの山とは大分印象が異なります。
スリーヴ・エルバの頂上からアラン島の3つの島全てを見ることが出来ました。
スリーヴ・エルバの頂上からゴールウェイベイを望む。
スリーヴ・エルバから望むバレン高原の集落
バレンを突っ切る砂利道。(車をこの道の路肩に停めてスリーヴ・エルバまで歩きました)
ちょうど車を停めた横の牧場には馬が馬が放たれていて、仔馬が興味深そうに私のところに寄ってきました。
上の馬の動画編。(長さは約20秒位です)
バレン最高地点スリーヴ・エルバ山ウォーキングの全行程はこんな感じでした。
総距離4.54km、所要時間1時間55分でした。
Gleninagh Mountainと合わせると総距離15.14km、所要時間7時間1分でした。
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帰りに有名な「巨人のテーブル」プルーナブローンのドルメンを見ていきました。
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バレンの南東にはバレン国立公園(Burren National Park)があります。
国立公園に指定されたエリア内にも歩きがいのある山がいくつかあります。
私は「Mullaghmore」という山とMullaghmoreに隣接した「Slieve Roe」と 「Knockanes」に登ってみました。
登山口の近くから見たMullaghmore。高さは180メートルほどですが、とてもインパクトのある形しています。
なんとなく秩父の武甲山に似てなくもないような気もします。
国立公園内には色分けされたウォーキングコースが設定されています。
私はどのコースでもなく適当に歩きました。
歩き始めてしばらくはこの湖の脇を通ります。
湖の真ん中の方と縁の方で、水の色が違って見える変わった湖です。
ここでも月面を歩いているような気分になれます。
しばらく登って登山口の方を振り返ると、こんな風に見えます。
ここがMullaghmore山の頂上です。頂上にはケルンがあります。
ここまでの道のり
ここまでの距離2.48km、所要時間56分でした。
Mullaghmoreの頂上からの眺め。前に見える湖はさきほどの湖とは別の湖です。
前に見えるのがMullaghmore山の次に向かうSlieve Roe山(スリーヴ・ロー)です。Slieve Roeにはケルンなど頂上を示すものは何もありません。
Mullaghmoreからの眺め。動画編です。(長さ約30秒位)
Slieve Roeの頂上付近から見た麓の集落。
バレンで同じみの石積みの塀です。
石積みの塀の沿って歩いて、Slive Roeの次の山Knockanesを目指します。
ここがSlieve Roeの次のKnockanesの頂上です。高さは205メートルです。
ここまでの道のり
ここまでの距離6.28km、所要時間2時間37分。
Knockanesからの眺め。前に見えるのは「Turloughmore Mountain」という山のような気がします。この辺にあるみんな見た目が似てて、なかなか区別がつきません。
本日の全行程。
歩いた総距離11.54km、所要時間4時間52分でした。
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「ボストン」といえばアメリカのボストンを思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、アイルランドにもボストンという地名があります。 アイルランドのボストンはバレン高原の北東にあって、バレンへの入り口となっています。 この村がアメリカのボストンと関係があるのどうかは分かりませんが、アメリカのボストンはアイルランド系の住民が多い所として知られています。
バレンの入り口となるクレア州のボストン村の入り口。
ボストンのメインストリートです。ボストンにはお店も郵便局もありません。民家以外にあるのは学校と教会くらいです。
1873年に開校した歴史のある学校です。
ボストンの村から見たバレンの眺めです。
ボストンの村外れにある城(跡)です。
ボストンの近くでは新しい高速道路を建設中です。
クレアの州都エニスとゴールウェイ州のゴート(Gort)を結ぶM18です。
ちなみに私が帰国するちょっと前(2011年)*に開通しました。
*2017年現在はゴートからゴールウェイ市内のM6ジャンクションまで延伸しているそうです。M6ジャンクションからはM17に接続しトゥアム(Tuam)まで高速で行けるそうです。
そのうちエニスからスライゴまで高速で行けるようになりそうですね。
ボストンの近くの家の庭先にひまわりが咲いていました。
アイルランドではひまわりを見る機会は多くはありません。
ボストンを自転車で走っている所を動画で撮ってみました。
どんな所か参考までに見てみてください。(長さ約45秒)
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バレン国立公園の近くに「カラン(Carran*)」(キャランとも)という小さな村があります。
ボストンよりさらに小さな村です。*"Carron"と綴られることもあります。
カランはGAAの創始者「マイケル・キューザック(Michael Cusack)」の出身地として知られています。
「GAA」とはGaelic Athletic Associationの略で、日本ではゲーリック体育協会と訳される、アイルランドの国技とされるハーリングやゲーリックフットボールといったアイルランド発祥のスポーツを統括している協会です。
カランの村の入り口。アイルランド語で綴ると「An Carn」になります。「An Carn」はケルン(山にある積み石)という意味です。
カランはとあるウォーキングイベントに参加していて通りました。
ウォーキングイベントの参加者の一人が教えてくれた「秘密の洞窟」への入り口。バレン高原にはたくさんの洞窟があるそうです。
カランの村の近くにも「アルウィー洞窟」という観光客にも人気な有名な洞窟がありますが、観光地化されていないマイナーな洞窟もいっぱいあるそうです。
観光地でない「生洞窟(?)」は入る時はヘッドランプなどのライトとウェットスーツが必要だそうです。
カラン村の廃校となった小学校。ボストンと違いカランの小学校は廃校となってしまっています。
カランの小学校の壁にはマイケル・キューザックのプレートが埋め込まれています。
ウォーキングイベントに参加していた子供が持って来ていたハーリーとSliotar。
ハーリー(Hurley)とはハーリング*の時に使う道具で、スティックと呼ぶこともあります。Sliotarは発音が分からないのですが、ハーリングの時に使うボールのことです。
*アイルランドの国技と言われるホッケーに似たゲーム。
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バレンを車で通っていると、こんなキャンピングカーのようなものが集まっているエリアを目にすることがあります。
これはモバイルホームという移動式の住居なのですが、アイルランドではこのような移動式の住居に恒久的に住んでいる人たちがいます。
中にはトラベラーというアイルランド版のジプシーのような人たちも居ますが、バレンで目にするモバイルホームに住んでいるのは一般の人たちです。
モバイルホームだと家賃が安いなど、色々な理由からけっこう普通の家族とかで通年でモバイルホームに住んでいる人達も居ます。
私が通った語学学校の先生がまさにこういうモバイルホームに住んでいました。(結婚していて子供もいる人でした)
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バレンの定番中の定番の観光地といえばモハーの断崖です。
説明不要の名所中の名所です。
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