アイルランドの車事情
アイルランドの田舎に住むには車は必需品です。
いざ車を買おうと思っても、日本とは勝手の異なることもあり、初めて住む外国で車を買うのはなかなか勇気のいることだと思います。
このページではアイルランドでのマイカー事情など、車にまつわることについて書いています。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
フィークルのような公共交通機関の通っていない田舎に暮らすには車は必需品です。*
アイルランドに着いた段階ではどこに住むとか何も決まっていなかったので、しばらくはエニス*のホステルに泊まるつもりでいました。
*クレア州の州都
ラッキーなことにアイルランドに着いて2日目に住まいが見つかったのですが、その住まいというのがフィークルのアイルロッジ*だったのです。
*アイルランドで私が住んでいる家。
住むところが見つかったのは良かったのですが、アイルロッジで暮らすには車が絶対に必要なので、翌日(アイルランドに着いて3日目)から車を探しに色々な中古車店を訪ねてみました。
地元の新聞に掲載されている個人売買のコーナーや、オークションの方が安く買えるらしいのですが、名義変更に時間がかかったりすると聞いたので、お店から買う方がその辺りの手続きが早く済むと思い今回は中古車店から購入することにしました。
*一応「猫バス*」と呼ばれるコミュニティーバスのサービスがありますが、利用方法が普通の路線バスとは若干異なります。時間もあまり正確ではないので、日常的な利用には不向きといえます。(2011年の時点で)
*サービスの名前が「Clare Accessible Transport」なので、略すと「CAT(猫)」になります。
急ぎの用だったので、どこで買うのがいいのかじっくり考える暇もなかったので、エニス*から徒歩か公共交通機関で行けて、日本に帰る時に買った車を買い取って貰える販売店を検索してみました。(*クレア州の州都)
条件に合う販売店はいくつか見つかったのですが、日本に帰る時のことを考えると空港の近くがいいのかなと思い、シャノン空港*から近くフィークルからもそれほど遠くない東クレアのクラットロー(Cratloe)という村にある販売店を訪ねることにしました。(*クレア州にある国際空港)
クラットローはクレアの観光地として有名なバンラッティ城の近くの村です。「シャノン国際空港」からも近く、フィークルへのアクセスも悪くないです。
クラットロー村の中古車販売店。廃車のスクラップ場にも見えないこともないですが、ちゃんとした車屋さんです。
お店に人に予算を告げると、勧められたのがカローラとルノーのメガーヌでした。ここはメガーヌを選ぶことに。
メガーヌを購入することを決めて代金を払った後、乗って帰れるように整備するのでどこかで時間を潰していてくれとのこと。
お店の近くのバンラッティ・フォークパークを勧められたのですが、適当にクラットロー周辺をぶらぶらすることにしました
クラットロー村の中古車販売店の前の道です。
とりあえずバンラッティとは逆の方に進んでみることにします。
上の通りを進むと途中で踏切が見えてきました。
遮断機が下りているところでしたが、警報器はありません。
しばらくして列車が通り過ぎていきました。リムリックからエニスに向かう列車です。列車が過ぎた後は当然遮断機が上がるわけなのですが、こちらの遮断機の上げ方はすごいです。下はこの時たまたま撮っていた動画です。
上の動画を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、アイルランドの田舎の踏切の遮断機は人力なのです。
列車が通った跡は線路側に遮断機を下ろします。
踏切の奥にある建物は駅舎として使われていた建物のようです。
現在この村に鉄道の駅は置かれていません。
線路を渡ってしばらく行ったところにパブがありました。
割と広めのパブで食事も出来る*ところだったので、本日のスープ(Soup of the Day)を頼んで適当に時間を潰すことに
*アイルランドでは食事を出さないアルコールオンリーのパブも多くあります。
本日のスープの付け合わせのソーダブレッド。
これだけでも結構お腹いっぱいになります。
パブに貼ってあった張り紙。
子供は8時30分以降はパブから出るようにと書いてありますが、子供でもパブに入れることの方に驚いてしまいました。
パブを出て時間を潰すため、クラットロー村の東の方へ。
村の東側にはウッドコックヒル(Woodcock Hill)という小高い丘があります。
丘の上からはリムリックの町を一望できます。
ウッドコックヒルから眺めたリムリック市の遠景。前方に見える川はシャノン川です。
ウッドコックヒルの上にはアイルランド航空協会(Irish Aviation Authority)が設置した航空気象レーダー(aviation weather radar)が建っています。
その後中古車販売店に戻り、保険の手続きをして車を受け取りました。
随分もあっさりと購入できるんだなぁとちょっと拍子抜けしてしまいました。
ちなみにこの時点で私は日本で自分で車を買うどころか、運転すらしたこのないペーパードライバーでエニスまで自分の帰れるかどうか不安だったのですが、なんとか無事にたどり着くことができました。
アイルランドで車を運転する際は当然ですが、運転免許証が必要です。
アイルランドで車を所有して運転する際、日本の運転免許証+国際運転免許証で運転できます。
アイルランドの免許証に書き換えることも出来ますが、免許の書き換えにはPPSナンバーが必要になります*。(*2010年の時点で) PPSナンバーとは「Personal Public Service Number」の略で日本のマイナンバーに相当するアイルランドで色々な社会保障を受ける際に必要になる個人IDです。
車を運転する際は当然保険も必要になります。レンタカーであれば海外旅行傷害保険とかでも運転できるかもしれませんが、アイルランドで自分名義の車を運転するには保険に入っていないと公道を走ることができません。
私は車を買った中古車販売店で勧められたアクサの保険に入っていました。
これがクラットローの中古車販売店で買ったルノーのメガーヌです。
ナンバープレートです。一番上に書いてある「BAILE ATHA CLIATH」はダブリンのアイルランド語綴りです。その下の「02-D-64627」は左から登記された年、登記された場所、登記された順番を表します。
この車であれば「2002年にダブリンで64627台目」に登記されたということになります。
アイルランドでは車の名義が変わっても車のナンバープレートが変わることはありません。(一度廃車にした場合はどうなるか分かりませんが・・)
アイルランドのナンバープレートについてはこちらを覧になってください。
メーターは時速と距離はマイルで表示されています。
買ったばかりのこの時点で6万525マイル(約9万7千キロ)走行しています。
マイルの感覚に馴れると速度の感覚も大分変ります。
運転に馴れてくると60マイル*くらい出すのはへっちゃらになってきます。(*時速60マイル = 96キロ)
ハンドル周りです。エアバッグ付きです。アイルランドは日本と同じ右ハンドル、左側通行です。車の運転や操作に関して特に困ることはないのですが、ワイパーとウインカーの操作が日本とは逆になる車が多いです。
ワイパーの操作は右で
ウインカーやライトの操作は左でします。
私は日本で車の運転をしたことがなかったので特に問題なかったのですが、日本で車を運転していた人だと、馴れないうちはウインカーを出すつもりでワイパーを動かしてしまうことがよくあるそうです。
5速マニュアル車です。バックの入れ方が日本の教習所で乗った車と違っていて始めの頃は戸惑いました。ちなみにアイルランドでオートマ車はほとんど見かけません。中古のオートマ車は出物が少なく、あったとしても同クラスのマニュアル車よりもかなり高いことが多いです。
アイルランドで車を運転するためには、フロントグラスにタックスディスク(車税の納税証明書)、車検ステッカー、保険証を表示させなくてはいけません。左から納税証明書、車検ステッカー、保険証です。ちなみにアイルランドに自賠責保険はありません。
郵便局に行くついでにさっそくフィークル村をドライブ。 下はメガーヌに取り付けた車載カメラで撮った映像です。
馴れるとこんな細道でも60マイルで走れます。
アイルランドは日本と同じ左側通行なので、ほぼ日本と同じ感覚で運転できるのですが、恐らく多くの日本人が初めてアイルランドで車の運転をするときに戸惑うのがラウンドアバウトではないでしょうか。
ラウンドアバウトは日本では環状交差点と呼ばれているそうです。
始めのころはややこしく感じるかもしれませんが、信号がない分完全に停止する必要がないのと、右折待ちの渋滞が起きない、出会いがしらの衝突事故も起きにくいので馴れるとラウンドアバウトの方が楽に走れます。
ラウンドアバウトの中を走っているところを外から見るとこんなふうに見えます。
ラウンドアバウトの中を自分で走っている時はこのように見えます。
アイルランドにも日本の車検に相当するものがあります。
アイルランドでは「NCT」と呼ばれています。
「NCT」は「National Car Test」の略でアイルランド国内を走る乗用車は2年に一回NCTを受けて、NCTに合格した車でなければ公道を走ることができません。(2011年の時点で)
NCTは日本のユーザー車検に似ているでしょうか。
自分で車検場に車を持ち込んで検査を受けます。
検査中の相棒
検査が終わるまでこの待合室で待ちます。
検査に通ると新しい車検証が貰えます。
これが新しい車検証です。
車検場近くのパーツ屋さん。NCT用パーツも取り扱っていると謳っています。
NCTも不合格になると再検査を受けなければいけません。
再検査にはお金もかかるし、検査のために時間も割かなければいけないので、中には整備工場で車検前に車検(NCT pre-test)を受ける人もいます。
NCTのためのパーツを取り扱っているそうです
アイルランド版のタイヤ館? リムリックを中心にマンスター地方に多く出店しているタイヤ専門店のチェーンです。
トヨタのディーラー
トヨタはリムリックに拠点を置くラグビーチーム「マンスター・ラグビー」のスポンサーになっているので*、巨大なラグビージャージが飾れラれています。*2010年の時点で
ホンダのディーラー
こちらはヒュンダイのディーラー。ヒュンダイ以外の車も取り扱っています。
ホンダとヒュンダイのディーラーはお隣同士の関係。
ヒュンダイのマークってホンダに似ているような気が・・
ある日突然届いた一通の手紙・・・
差出人はAn Garda Síochána*、つまり警察からです。
一体何の用件だろうと読み進めると・・
*アイルランドの警察の正式名称。一般的には「Garda(ガルダ or ガーダ)」と呼ぶことが多いです。
「キルデア州クレイン(Clane)の制限速度50kmの道を61kmで走った件についてのご連絡です。」とのことです・・ご丁寧にナンバープレートの写真付きです・・
反則金は80ユーロだそうです。
反則点が2点付くそうです。
28日以内に反則金を収めるようにと書いてあったので、即反則金を払いにいきました。反則金は郵便局で払えます。反則点は郵便局のスタッフの人が反則金を払いましたみたいことを免許証*に書き込んで手続き終了です。
期限以内に反則金を収めないと反則点が4点になるそうです。何点だったか覚えていませんが、アイルランドでも反則点が増えると免停になります。
*国際免許であってもばっちり書かれます
アイルランドのスピード違反の取り締まりは、日本のように物陰に隠れて取り締まる「ネズミ捕り」と、隠しカメラによる取り締まり、スピードバン(Speed Van)と呼ばれる移動式の速度取締機による3つが代表的です。
スピードカメラ有りの標識。この標識の立っている通りには、スピードカメラがどこかに仕込まれているらしいです。恐らく私もこのカメラにやられたんだと思います。
これはスピードバン(Speed Van)と呼ばれている移動式の速度取締機です。いつ何時どこに現れるか分からない不気味なヤツです。
最初見た時はスピード抑制のためにはったりで停まっているのだろうと思っていたのですが、リアルで取り締まっているようです。
ちなみにアイルランドでも、このスピードバンが置いてある通りや、有人のネズミ捕りをやっている通りでは、パッシングで知らせ合うのが普通のようです。
車に興味のない人や、このタイプの車種に興味のない人には関係のない話なのですが、アイルランドでは観音開きのバンをよく見かけます。よく見るというよりも恐らくバンいえば観音開きの方が圧倒的に多く、ハッチバックを見ることはほとんどないような気がします。
以下はアイルランドで見かけた観音開きのバンです。
日本でも人気のカングーの商用車バージョン。日本では乗用車バージョンしか見ませんが、アイルランドでは商用車バージョンの方がだんぜん多く、乗用車バージョンを見たことはほとんどありません。
カングーの郵便局モデル。アイルランドの郵便局が導入している配達車のメーカーは色々で統一されていません。
こちらはシトロエンのベルランゴの郵便配達バージョン。他にフォルクスワーゲンとプジョーの郵便配達車もあるようです。
北アイルランドの郵便配達車。北アイルランドはイギリスなので、郵便物はロイヤルメールの取り扱いです。
アイルランドのソウルフード(?)「テイトー」の営業車。ベース車両はフォルクスワーゲン・キャディ。
日本でも郵便局で使われていたスーパーカブ(郵政カブ)のお下がりが市場に出てくることがありますが、アイルランドでも郵便配達用のバンのお下がりが売られていることが稀にあります。走行距離は相当行っていることが多いですが、安くて丈夫なので敢えて郵政車両に乗る人も居るようです。
カングーがライトエースなら、こちらはハイエースといったところでしょうか。ルノーのトラフィックというカングーよりも大きめのバンです。これも後ドアは観音開きです。
上のトラフィックの日産バージョンもあります。日産のプリマスター(Primaster)です。日本で見ることはまずない車種です。
パンの配達に使われている観音開きのバン
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
観音開き、ハッチバックそれぞれに利点があると思いますが、アイルランドで見かけるバンは圧倒的に観音開きの方が多いです。理由は分かりませんが・・
これは「cattle trailer(カトル・トレーラー)」といって、アイルランドの田舎でよく見かける、家畜を運ぶためのトレーラーです。フィークルあたりだと牛を運ぶために使うことがほとんどのようです。
アイルランドにいるとこの「L」マークを付けた車もよく見かけます。「L」はLerner(学習者)のこと。つまり学習者ドライバーということで、日本の初心者マークに相当します。
「L」マークはお店で普通に買えます。
日本語が書かれたナンバープレート。
WDはWaterfordの略でカタカナでウォーターフォードと書かれている部分には「PORT LAIRGE」と書いてあるのが普通なのですが・・・
アイルランドにもこういうジョークが分かる人が居るんですね
「は」はアイルランドでは何の意味もありません。
アイルランドの田舎の典型的なお店。
グロッサリーショップ(grocery shop)とパブとガソリンスタンドを兼ねています。この村にはお店もパブもガソリンスタンドもここ一軒だけしかありません。場所によっては郵便局も兼ねている所もあります。
アイルランドでは給油機が外にむき出しになっているガソリンスタンドはめずらしくありません。
リムリック市内の公共の駐車エリアに停める時に使う「駐車券」です。
スクラッチカードみたいになっていて、停める「年月日、時間、分」を削ってダッシュボードに置きます。
アイルランドでは車の個人売買が盛んです。「いくらで売るよ」と値段を張りだしてある車をよく見かけます。
アイルランドの教習車です。アイルランドでは日本のような「所内型」の教習所はほとんどありません。教官とどこかで待ち合わせして、運転のイロハを教えてもらいます。教習車も普通の車のことも多いです。稀に助手席側でアクセルとブレーキの操作ができる「dual control car」を見ることもあります。
アイルランドの田舎でよく見かける標識。
所謂「路肩に注意」の標識です。「No Verge」は「路肩がありませんよ」と言う意味になります。同じ意味の標識で「No Hard Shoulder(肩がない)」書かれた標識もよく見かけます。英語でも路肩は「shoulder (肩)」といいます。
これも田舎でよく見る注意書き。
「こぼれた油に注意」の意味です。田舎はトラクターがよく通るのですが、なぜかトラクターは機械油だかなんだかオイルをまき散らしながら走るのです。トラクターがよく通る道では車のスリップに要注意なのです。実際に目の前でスピンして農場に突っ込んでいった車を見たことがあります。
トラクターが道路を通っている所がこちら。車幅があって追い抜くに追い抜けないし、速度も遅いのでトラクターが走っているとよく後が渋滞します。
渋滞と言えばアイルランドの田舎ではこんな渋滞も定番です。
立ち止まって草を食んでいくヤツや、フロントグラスやバックミラーを舐めていくヤツもいます。
左はアイルランド共和国、右は北アイルランドの標識
意味はどちらも「道をゆずれ」