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【東クレアを自転車で一周①】
私の住むクレア州のフィークルには「イースト・クレア・ウェイ(East Clare Way)」という東クレアをぐるっと一周する全長180kmのウォーキングコースが通っています。
アイルランドには「ナショナル・ウェイマークト・トレイル(National Waymarked Trails)」と呼ばれる比較的距離の長いウォーキングコースが全国各地にあります。
自分の住む地域のことをよく知るためにも、東クレアの村々を訪ね歩くのはいい経験になると思い、180kmの全ルートを回ってみました。
East Clare Way Route Description
イースト・クレア・ウェイは全長180kmありますので、徒歩で1日で全ルートを回るのは、よほどの健脚でないと難しいと思います。イースト・クレア・ウェイの公式ガイドブックでは180kmのルートを約25km~47kmの6つのセクションに分けて6日間で歩くことを推奨しています。
ルートの大半は自転車でも通れるので、自転車なら頑張れば一日で全行程回ることも出来ると思います。
私は2日間に分けて全ルートを自転車で走破してみました。
Cycling along the East Clare Way: Section 1 - Killaloe to Broadford
公式ガイドブックによればイースト・クレア・ウェイはフィークルの南側に位地するキラルーという町からスタートすることになっているので、いったんキラルーに向かいキラルーから走り始めました。
キラルーはアイルランドで二番目に大きな湖「ダーグ湖」の湖畔に位置する町です。
キラルーはアイルランドの最後の上王(High King)「ブライアン・ボルー」の出身地とあって、町の中にある観光案内所にもブライアン・ボルーの名前が使われています。
沢山のボートが停泊しているキラルーのマリーナ(marina)
シャノン川に架かるキラルー・ブリッジ(Killaloe Bridge)。
向こう側はティペラリー州のバリナ(Ballina)という町になります。
キラルーの町を離れ、イースト・クレア・ウェイ沿いにブロードフォードへと向かいます。ブロードフォードまで約19kmです。
キラルーを出てしばらくはクレア州最高峰のスリーヴ・バーナ山地(Slieve Bearnagh)の南側のふもと沿いの道に沿って進みます。
スリーヴ・バーナ山地のふもと通り沿いからは、リムリックとティペラリー州に跨りそびえるガルティー山脈(Galtee Mountains)が見えました。
手前に見える川はシャノン川です。
上と同じ所からはリムリック市内も見渡すことができます。
画像の左にはリムリック市のランドマークの一つセント・ジョンズ・大聖堂(St. John's Cathedral)を見ることが出来ます。
スリーヴ・バーナ山地の麓に沿って通る道を進むと、途中から上り坂になります。上り坂を登りきるとGlennagalliaの峠に出ます。
Glennagalliaの峠からの眺め。ここは東クレアの隠れた絶景スポットです。
この峠を下りきったところにキルバーン(Kilbane)の村があります。
キラルーのお隣のキルバーン村の元パブ兼郵便局。現在は営業していないようです。
キルバーンの中心部。パブが一軒あるだけのとても小さな村です。
キルバーンを抜けるとダート道に入ります。MTBやツーリング用の自転車であれば走破可能です。
ダート道からはクレア州最高峰のスリーヴ・バーナ山地がよく見えます。
スリーブ・バーナ山地のふもとの牧場では干し草ロールを作るための草を刈っていました。
ダート道を抜けるとイースト・クレア・ウェイの第一セクションのゴールであるブロードフォードの町に入ります。
ブロードフォードの町の中心部です。ブロードフォードはリムリック*に通じる県道が通っているので、東クレアの交通の要所となっています。
*アイルランド第4の都市。フィークルのような田舎に住んでいるとなにかとリムリックに出る機会があります。
ブロードフォードの教会
Cycling along the East Clare Way: Section 2 - Broadford to Tulla
イースト・クレア・ウェイの2番目のセクションはブロードフォードからタラへ至る約38kmのルートです。
ブロードフォードからまずR465沿いに一旦リムリック方面に向かい、途中から西側に進路を取り林道を通ります。
林道を走っていたら前方にウサギ発見。
鹿も居ました
林道を抜けると湿地帯になります。湿地帯には木道が通してあります。
この辺りは湖が多くあります。小高い丘の上を通るイースト・クレア・ウェイのルート上からも多くの湖を見ることができます。
上空から物音が聞こえてきたので、見上げるとヘリコプターが
東クレア周辺でヘリを飛んでいるのを見ることは滅多にないかも
長い下り坂を下ります。マウンテンバイクなんかだと豪快なダウンヒルが楽しめるかもしれません。
道中に咲いていたジギタリス(フォックスグローブ)
ブロードフォードのお隣の町、オキャラハンズミルズに到着しました。
オキャラハンズミルズにある唯一のお店「ドイルズ(Doyles)」。雑貨屋さん兼郵便局兼、ガソリンスタンド兼パブという田舎の典型的なお店です。
オキャラハンズミルズのメインストリートに建っていたTim Smytheの碑。
Tim Smytheはオキャラハンズミルズ出身の陸上選手で、1931年世界クロスカントリー選手権で優勝したそうです。
引退後はクレアの県議会議員として活躍したそうです。
オキャラハンズミルズの町の近くにあった可愛らしい家。
「Mountain View Lodge」という名前が付いているようです。
掘った泥炭を乾かしているエリアがありました。
アイルランドでは泥炭を掘ることを「ターフ・カッティング(turf cutting)」と言います。turf cuttingを直訳すると"芝刈り"という意味になりますが、アイルランドでturf cuttingといえば泥炭を掘ることを意味します。泥炭を掘って固めて乾かしたものは「ピート(peat)」と呼ばれ暖炉や薪ストーブで燃やす燃料として使われます。
上の泥炭採掘場(?)の脇に停めてあった泥炭を積んだトレーラー
泥炭の採掘場の抜けると森の中に入ります。
森を抜けると辺りが開けLough Cullaunyheedaという湖の湖畔沿いを通ります。この湖の近くにはCraggaunowenというアイルランドの古代の生活を再現した観光施設があります。
広い道は通称「タラ・ロード(Tulla Road)」と呼ばれている道です。
エニスからタラに通じているので、地元の人たちからはこのように呼ばれています。イースト・クレア・ウェイもこの道を通ってタラの町へと入っていきます。
Cycling along the East Clare Way: Section 3 - Tulla to Feakle
イースト・クレア・ウェイの3番目のセクションはタラからフィークルへと至る24kmのルートです。
タラの町の入り口です。「タラ(Tulla)」とは丘という意味だそうです。
タラの愛称の「The Windswept Hill」は曲の名前にもなっています。
タラのメインストリート
タラの町中に立てられている注意書き看板。意味は絵の通り。poop(う〇こ)をscoop(拾え)と語呂合わせっぽくなっていて分かりやすいです。
下の日本の某市の公園に立てられている注意書きに比べれば、遊び心があっていいなと思います。
日本の某公園内に立てられている注意書き看板。言っている意味はひとつ前の注意書きと同じですが、言い回しがストレート過ぎ・・
イースト・クレア・ウェイはタラの町のど真ん中を突っ切ります。
途中で馬に乗った人とすれ違いました。アイルランドの田舎では普通の道で馬に乗っている人とすれ違うことは珍しいことではありません。
東クレアは馬に乗る人が多いのか、イースト・クレア・ウェイ沿いには、乗馬関連の施設が多くあります。これはその一つの馬の調教施設です。
自転車の車輪が利用されていて面白いです。
長い直線の芝生のコースにワイヤーが張られています。
コースの両端に自転車の車輪が取り付けてあり、自転車の車輪にワイヤーが引っ掛けられています。この画像の二つ2つ上の画像に写っている自転車のペダルを回すとワイヤーが動く仕掛けになっています。ワイヤーに馬の餌をぶら下げて、馬に餌を追わせて走らせるようになっているようです。
この馬の調教施設の真横を通る砂利道が、イースト・クレア・ウェイのウォーキングルートになっています。
この時期(6月)は子牛が生まれる時期なのか、イースト・クレア・ウェイ沿いの牧場はどこも子牛でいっぱいでした。
上の画像とは別の牧場です。こちらも子牛ラッシュでした。
イースト・クレア・ウェイ沿いの牧場にあった不思議な物体・・
ラグビーのゴールのように見えますが、高さが半端なく高い・・
アイルランドの田舎でお馴染みの「一時的路面道路」です。
人里離れた田舎道を進んでいきます。
もっとも私の実家のある埼玉の某町の道もこんな感じなので、東クレアの田舎に住んでいても外国に住んでいるという感じがしなんですけどね。
タラからフィークルまで表通りで行けば10kmほどの距離なのですが、イースト・クレア・ウェイは裏道(back roads)を通っていくので、倍以上の距離を進んでいきます。この道もイースト・クレア・ウェイのタラからフィークルに至るセクション沿いの道ですが、イースト・クレア・ウェイを知らなかったら絶対に通っていなかったと思います。
イースト・クレア・ウェイのタラ→フィークル・セクションの最後は森の中を進みます。
森の中で小鹿に遭遇。鹿はアイルランドの田舎でよく見かける動物です。
森の中を流れる小川を越えます。自転車でも走行可能です。
この森を抜けるとフィークルの村に入ります。森の中ではカッコウの鳴き声が聞こえました。カッコウはフィークル周辺では珍しくないのですが、アイルランド全体で見ると全然生息していない地域もあるそうで、キャバン州出身の大家さんの奥さんはキャバンに住んでいた時はカッコウの鳴き声を聞いたことがなかったそうです。
参考までにフィークルの森で鳴いていたカッコウの鳴き声です。
ここがイースト・クレア・ウェイの第3セクションのゴール地点です。この道を手前側に進むとフィークルの村の中心部に至ります。反対側がイースト・クレア・ウェイの第4セクションのルートになります。
第1セクションのキラルーからここまででちょうど88.88kmでした。
Cycling along the East Clare Way: Section 4 - Feakle to Flagmount
イースト・クレア・ウェイの4番目のセクションはフィークルからフラッグマウントへと至る約24kmのルートです。
フィークルは私が住む村ですが、イースト・クレア・ウェイは有名なペパーズや、ショーツバーといったパブがあるフィークルの村の中心部は通りません。村の中心部から5km以上離れた北側の湿地帯を通りお隣のフラッグマウントへと向かいます。
イースト・クレア・ウエイのフィークル→フラッグマウント・セクションはフィークルの北側に位置する広大な湿地帯からスタートします。湿地帯には木道が通してあります。
イースト・クレア・ウェイの道しるべ。奥に見えるのはマハラ山という山の上に建つテレビ塔です。
地元で「Altoir Ultach」と呼ばれているキャップストーンのない「ドルメン」です。
まだまだ湿地帯が続きます。この辺りはほとんど「担ぎ」か「押し」になります。パスハンティングコースとしてももなかなか楽しいところです。
奥にグレイニー湖が見えてきました。グレイニー湖は東クレアを象徴する湖の一つで伝統曲のタイトルにもなっています。
小川を渡り森の中へと入っていきます。
フィークル周辺では数少ない落葉樹が中心の森の中を走ります。
森を抜けると「ホワイトサンド」という名前の付いたグレイニー湖畔の砂浜の上に出ます。ここは湖水浴場になっていて夏になると海水浴場ならぬ湖水浴場となるようです。
しばらく湖畔沿いに走るとフラッグマウントの村に到着します。
フラッグマウントの入り口です。
フラッグマウントの村の中心部です。村には食料品を扱うお店と、郵便局と、ガソリンスタンドとパブを兼ねたお店が一軒ある以外には何もありません。フィークルよりもずっと規模の小さな村です。
フラッグマウント唯一のお店「J.O'Mara」。
食料雑貨店と郵便局とガソリンスタンドとパブを兼ねています。
Cycling along the East Clare Way: Section 5 - Flagmount to Whitegate
イースト・クレア・ウェイの5番目のセクションはフラッグマウントからマウントシャノンへと至る約43kmのルートです。
このページでは前半のフラッグマウントからホワイトゲートに至るルートを紹介します。
フラッグマウントの村からのグレイニー湖とマハラ山の眺め。写真に写っているグレイニー湖の中に浮かぶ小さな島は「Green Island」という名前の島です。フラッグマウントに住む農家の人が所有する島で、島の所有者は地元ではアコーディオンの奏者としても知られています。
フラッグマウントからマウントシャノンに至るエリアの北側は「Slieve Aughty Mountains」と呼ばれる丘陵地帯で、湿地帯の多い典型的な「荒野」といった雰囲気のする所です。お世辞にも自然の豊かな所とは言えないのですが、個人的にはこの辺りは時に東クレアの中でも好きなエリアで、よく自転車で走りにくることがあります。
Slieve Aughtyの周辺をドキュメンタリータッチで描いたショートフィルムがあります。若い映像作家が撮ったもので、何故か私もちらっと登場します。(フィークルのパブ「ショーツバー」でのセッションのシーンで写っています。メアリー・マクナマラも登場します。)短い作品ながらSlieve Aughty周辺をよく知ることができる良い作品だと思いますので、よかったらご覧になってみてください。
なにもない田舎の砂利道なのに、なぜか立派なつくりをした橋が掛けられています。Turkenagh Bridgeという名前の橋だそうです。
Turkenagh Bridgeの近くにあった廃墟と化した建物。
これはもともと学校(National School)だった建物です。
学校があったということは、その昔はこの辺にも人が住んでいたということなのですが、過疎化に伴い廃校になってしまい建物だけが残っています。
過疎化した要因のひとつは19世紀半ばにアイルランドを襲ったじゃがいも飢饉です。飢饉の前はもっと人口が多かったそうですが、飢饉によって多くの人が餓死し、生き残った人たちの多くがアメリカなどに移民した結果、アイルランドの人口は最盛期の半分近くまでに減ってしまったそうです。
この元学校だった建物も建てられたのは飢饉よりも前なので、飢饉の前はこの辺にも多くの人が住んでいたんだと思います。
通りがかった牧場で野焼きをやっていました。アイルランドでも野焼きをやることがあります。ハリエニシダを燃やすことが多いそうです。稀に野焼きが山火事になってしまうこともあります。
上の野焼きをやっていた牧場の近くで鹿に遭遇。
上の牧場から少し進むと一面に綿花が咲いている草原がありました。
揺れる綿花を眺めながら走るのは気持ちがいいです。
草原の中にはドルメンもあります。Ardeevinのドルメンというドルメンで、大きさはご覧の通り自転車よりもちょっと高いくらいです。
草原の湿地帯ではターフカッティング(turf cutting)が行われていました。
ターフカッティング(turf cutting)とは直訳すると"芝刈り"という意味ですが、アイルランドでは泥炭を掘ることをターフカッティングと呼んでいます。掘った泥炭を固めて乾かしたものはピートと呼ばれ暖炉で燃やす燃料になります。ピートはウイスキーを作る時にも使われます。
乾燥途中の泥炭。
しばらく砂利道が続きます。奥に見える湖はダーグ湖という湖で、アイルランドで2番目に大きな湖です。
フラッグマウントのお隣の村ホワイトゲート(Whitegate)に向かいます。
ホワイトゲートの郵便局兼コンビニ。ホワイトゲートは東クレアの東の端のゴールウェイとの県境の近くに位置する村です。
このお店にはAEDが置いてありました。田舎のこの手の店で人目につくところにAEDを置いている店は珍しいです。AEDの装置が入っているボックスに鍵が掛かっていて何かあったときに誰にでもすぐに使えるのかどうか謎ですが・・
この後はマウントシャノンに向かいます。続きは次のページをご覧ください。