アイリッシュ・フィドル(ヴァイオリン)の演奏試験のススメ
頑張れば2年でマスターできる(!?)

 

アイリッシュ音楽の本場であるアイルランドではアイリッシュ・フィドル(ヴァイオリン)のための演奏試験が行われています。

 

本国では『SCT Exam』と呼ばれています。

 

『SCT』とは『Scrúdú Ceol Tíre』の略でアイルランド語で「国家の音楽の試験」という意味になります。

 

試験はアイルランド本国以外の国でも実施されていて、日本でも受験可能です。

 

次回はxxxx年はxx月xx日に試験が実施される予定です。

 

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試験は実技の他、聴音やリテラシーなど4つの項目に分かれていて、アイルランド音楽の演奏に必要となる技術や知識の習熟度を試されます。

 

アイルランドの音楽を演奏するもは皆この試験を受けなければいけないというものではありませんが、それなりに弾けるようになりたい思う方にはお勧めです。

 

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個人的にですが、SCT Examの最大のメリットは『自分の習熟度』を客観的に知ることができるということだと思います。

 

自分が出来ていない理由を知ることもできますし、出来るようにするために次は何をやればいいか、何を練習すればいいかということを知ることができます

 

私自身は語学留学(そもそも音楽を学びにアイルランドに行ったのではありません)でアイルランドに渡るまで、音楽の経験も楽器の経験も全くなく、ゼロの状態から楽器を学び始めました。

 

私がアイルランドに興味を持ったきっかけは・・

 

 

現地の音楽協会(CCÉ)が運営する教室に通ったので、基本的に教室でやること、レッスンで言われたことをやっただけなのですが、自分が「ちゃんとできているのかどうか」はなかなかピンとこないものでした。

 

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アイルランド音楽は譜面通りに弾く音楽ではありません

 

この曲はこう弾かなければいけないとか、この曲のこの部分はこういうふうに弾かなければいけないとか、そういった決まり事は一切にありません。

 

ある意味自分の自由な意思で好き勝手に弾いていいのです。

 

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実際に通っていた教室の先生に「どうやって弾いたらいいですか?」と尋ねても「君の好きなように弾いていいんだよ」という答えが返ってくるのです。

 

では本当に適当に自分の好きなように弾いて、本国アイルランドの演奏家と同じような演奏が出来るかというと、なかなかそうはいかないのです。

 

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出来ないところを出来ないままにしてしまっては、いつまでたってもちゃんとした演奏が出来ませんから、出来ないところは出来るようにしなければ意味がないのです。

 

でも何をすれば「出来ない所を出来るように出来る」のかが分からずに堂々巡りをしてしまうことがよくありました。

 

こちらのページに、アイルランド音楽の演奏を学ぶにあたって、「音楽の基礎力」、「楽器の基礎力」、「アイルランド音楽特有の音楽性に対する基礎力」を身に着けることが大事と書いたのですが、自分自身の演奏がどこかおかしいなと思った時、「なぜおかしいのか」を知ることはとても大事だと思います。それが分からなければ『おかしいところ』を直すことができません。

 

■ フィドル上達のための練習計画、練習方法 ■

 

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出来ていない理由が『音楽の基礎力』が伴っていないからなのか、『楽器の基礎力』に問題があるのか、はたまた『アイルランド音楽特有の音楽性』が理解できていないからなのか、理由が分からないことには練習のしようがありません。

 

やり方の合っていない練習は間違った弾き方を覚えていくだけですし、しまいには悪い癖をつけてしまいます。

 

「音楽の基礎力」と「楽器の基礎力」に関しては自分自身でどこがまずいのかをそれなりに判断できると思います¹。問題を独力で解決することもできると思います²。しかし「アイルランド音楽特有の音楽性に対する基礎力」に関しては、市販されている本などにやり方が載っているわけでもなく、それなりに特殊な分野になるので、自分自身でちゃんとできているのか、できていないのかの判断を下すのが難しいと思います³

 

¹ 例えば音程がすごく悪いというような場合ですが、原因の大半は「 音程を聞き分ける力(音楽の基礎力)」や「正しい音程を弾け分けられる力(楽器の基礎力)」の不足であって、アイルランド音楽云々の問題ではないことがほとんどだと思います。「私この曲の音程いつも外しちゃって・・・アイリッシュってやっぱり難しいんですね~」とか言っている人を見るのですが、それはアイリッシュ云々ではなく、音楽の基礎力の問題だと思います。

 

² 音程に関わることであれば地道に音階練習をするなどして正しい音程で弾くことを『出来るようにする』ことができるはずです。特段アイリッシュだからどうのこうのということはないと思います。

 

³ 日本の人だと「アイリッシュ」だとか「ケルト」だとかと、この音楽を「アイリッシュ」または「ケルト」の一言で済ませてしまいがちですが、厳密にはこれが「アイリッシュ(またはケルト)」と呼べる音楽はありません。日本の音楽にも青森に津軽三味線の演奏があり、沖縄に島唄があるようにアイルランドの音楽にも地域性があり、実際のところ「これがアイリッシュ」と一言では説明できません。そしてそういうことについて書かれた本やサイトはとても少なく、そういった情報に正しく知る機会はすごく少ないとと思います。アイリッシュフィドルの演奏の地域性については当サイト上のページが参考にしてみてください。

アイリッシュ・フィドルの地域性

 

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SCT Examはアイルランド音楽の演奏における『総合力』を試される試験ですので、「アイルランド音楽特有の音楽性に対する基礎力」が身についているのかそうでないのかも受験することによって客観的に知ることができます。

 

『試験』といってもいきなり難しいことをやるわけではありません。

 

試験は8段階に分かれていて、一番下の1級であれば初心者でも合格可能です

 

試験でやることは全てシラバスに書かれてあり、書いてあること以外のことはやらないので、シラバスを読めば自分はどの級なら受かりそうだということが判断できると思います。

 

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参考までに一級では以下のことをやります。


フィドル 楽譜

実際の試験では上に書いてあることを必ずやります。

もしシラバスに書いてあることが分からない、試験で自分が何をやらなければいけないのか分からない、というのであれば、アイリッシュ音楽の「初心者」にもなっていないということになります。

 

たとえば1級では「エアー」と「ダブルジグ」と「ポルカ」を弾かなければいけないのですが、「エアー」って何?「ダブルジグ」って何?といっているような人は試験を受けても意味がありません。

 

実際のところ普通にアイルランドでアイルランドの人の普通に習うのと同じように習っていれば、このレベルであれば半年で出来るようになると思います。場合によっては数日で出来るようになるかもしれません。人によっては数時間で出来るかもしれません。

 

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ちなみに8級では以下のことをやります。

さすがにこのレベルになると仮に世界的なヴァイオリン奏者であったとしてもこれまでに一度もアイリッシュを学んだことがなければ、いきなり一発で受かるということはまずないでしょう。多分普通のヴァイオリン奏者さんに「フリング」を弾いてください、「ショティッシュ」を弾いてくださいと言っても「???」になるだけでしょうから。。。


フィドル 譜面

 

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もし1級から受けていくとすれば、今年は1級を受けて受かったら来年は2級、その次の年は3級とステップアップしていけば8年後には最上級の8級まで到達できます。

 

8級の上はないので、8級に合格できればあなたも「アイリッシュ音楽のマスター」ということになります。

 

一年間の練習計画として最低限自分の持っている級の次の級でやることを出来るように練習すればいいわけなので、効率よく練習を勧めることができると思います。

 

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実際のところこの試験は1級から順々に受けていく必要はなく、自分のレベルに合ったところから受験が可能です

 

ただし一番上の8級をいきなり受けることはできません。

 

8級を受ける前に最低限6級に合格している必要があります。

 

なので誰でも6級から受験開始することができます。

 

所謂検定試験ですから、結果が点数として表されます。得点によって「可」とか「優」といった具合に評価が付くのですが、最優秀を表す「Distinction」という評価が付くと飛び級ができるようになっています。

 

なのでもし最初の年に6級を受けて「Distinction」で合格できれば次の年は最上級の8級を受験することができます。つまり早ければ2年で最上級の8級に合格、即ち2年でフィドルのマスターになれるのです。

 

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誰もが「上手に弾けるようになりたい」と思って練習していると思いますが、「上手になるため」の方法が分からないことには「上手になりよう」がありません

 

ことアイルランド音楽にいたっては「上手」の定義が他のジャンルの音楽とは異なる部分もありますので、その辺りを理解することもこの音楽を「上手」に弾くためには必要なのではないかなと思っています。

 

SCT Examは自分自身の腕前を客観的に知るためにも、次にやるべきことを知るためにも有益だと思いますので、興味ある方はぜひ受検してみてはいかがでしょうか。

 

当サイトでは私自身が『SCT Exam』を受験した時の模様を紹介しています。興味のある方は参考までにご覧になってみてください。

 

■ フィドルの演奏技能検定『SCT Exam』を受験してみた ■

 

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