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この世の中には色々なジャンルの音楽があると思います。
楽器屋さんなどを覗くと、楽器だけでなく楽譜やら教則本といったものが置いてあるのを目にします。
ギターの教則本や、ウクレレの教則本、ハーモニカの教則本、色々なジャンルの音楽の色々な楽器の教則本が置いてあります。
アイリッシュ音楽の世界にも当然教則本というものが存在します。
日本ではまだまだマイナーなジャンルの音楽なので、日本の楽器屋さんには教則本は置いていないかもしれませんが、本国アイルランドではアイリッシュ音楽で使われる様々な楽器の教則本が売られています。
このページでは特にアイリッシュ音楽のために書かれたフィドル(ヴァイオリン)の教則本について解説しているページです。
教則本選びの参考にしていただければ幸いです。
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この記事は、フィドルの教則本について書いた記事になります。
要はこの教則本はお勧めするけど、この教則本はお勧めしないみたいのことが、この下に書き連ねてあります。
お時間のある方で、読んでみても構わないという方にはぜひ読んでいただきたいのですが、とりあえず結論だけ知りたいという方もいらっしゃるかと思いますので、こちらに結論を書かせていただきたいと思います。
これからフィドルを始めようと思っている方には、以下の2冊のいずれかの教則本がお勧めです。
最近、日本語で読める「フィドルが弾きたい - アイリッシュフィドルを完全制覇する80曲」という教則本も出回っているようですが、上記の2冊と比べると出来栄えに差があるかなといった感じで、個人的には上記のいずれかを推したいと思います。
「フィドルが弾きたい」はわりと最近出版されたようですが、個人的にはこれを推すのは控えたいかなと思います。
なぜそうなのかについては、以下をご覧いただければと思います。
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この記事を書いている私「Taka」は、東京都内でフィドルの教室をやっています。
私自身、フィドルはアイルランドに住んでいた時に習い始め、アイルランドに本部があるアイルランド音楽協会が認定する、フィドルの指導資格を取得した上でレッスンをしています。
私の教室では、基本的のアイルランドの伝統的の指導方法に則って指導しています。
アイリッシュ音楽の伝統的な習い方は、楽譜を使わずに耳だけ聞いて習う、「ラーン・バイ・イヤー(learn by ear」という習い方が一般的ですので、私の教室でも基本的にはそのやり方で指導をしています。
私自身がアイルランドで習っていた時に、教則本や楽譜集の類をレッスンで使うことはありませんでした。
通常のレッスンとは別に受講した、ワークショップやサマースクールなどでは、ABCで書かれた譜面を貰うことはありましたが、基本的には全部耳で聞いて、見よう見まねで、聞きよう聞きまねで弾き方を覚えました。
私の教室で、ゼロのゼロから始めてくださる生徒さんであれば、最初からアイルランド方式で指導させていただくのですが、中には私の所で習い始める前に、ご自身でYouTubeや市販の教則本などを使って独習してからいらっしゃる方もいます。
私自身はYouTubeを見たり、教則本使って習ったことがないので、YouTubeにどんなコンテンツがあがっているのか、どんな教則本が売られているのか詳しくは知りません。
最近、レッスンを始めてくださった生徒さんで、以下の教則本をお持ちの方がいらっしゃいます。
「ピート・クーパー」という方が書いたフィドルの教則本の和訳本です。
日本ではここ最近発行されたようですが、原書は随分と前に書かれたそうで、初版は1995年だそうです。
以下の画像は上の画像の本の原書版です。私は原書版の方を取り寄せて、読んでみました。
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アイリッシュ音楽は、日本ではまだまだマイナーな部類の音楽のジャンルだと思います。
フィドルという名称も一般世間ではそれほど知られていないと思います。
マイナーなジャンルの音楽といえど、アイリッシュ音楽やフィドルについて書かれた書籍や、教則本の類はこれまで日本でもそこそこ発行されているようです。
下の画像に写っているのは、日本語で読めるアイリッシュ音楽の入門書です。全てアイルランド人の著者が書いたもので、アイルランドでも発行されている本です。(画像にはそれぞれの本の原書版も写っています)
上の画像に写っている本は、アイルランドの音楽界でそれなりに名の通ったアイルランド人が書いていますので、間違ったことは書かれていないと思います。
気を付けないといけないのは、アイリッシュ音楽について書いたと謳っている本でも、内容がよくない本もあるのです。
たいていの場合で、著者がアイルランド人でないことが多いです。
和訳本の場合は、翻訳に問題がある場合もあります。
例えば下の画像に写っている「Music in Ireland」という本は非アイルランド人が書いた、アイリッシュ音楽の入門書です。
この本には和訳本もあるそうです。
個人的にこの本は、あまりお勧めできないかなと思っています。
なぜかというと、独自研究?が多すぎかなと思います。
「アイリッシュ音楽ってこんな音楽ですよ。」といったアイリッシュ音楽の全体像の情報が欲しい人にとっては、内容が難しすぎるし、逆に演奏法や、歴史的な背景など、学術レベルでの情報が欲しい人には、個人的見解の作文が多すぎて、情報が不十分と感じてしまいます。
私自身は、私の教室に通ってくださる生徒さんには、もしアイリッシュ音楽の入門書や教則本を買って読んでみたりする時は以下の点に気を付けて選んでみることをお勧めしています。
アイリッシュ音楽についてそれなりにご存じの方からは、いろいろと突っ込まれてしまう書き方もしれませんが、あくまでもこれからアイリッシュ音楽やフィドルを始めようとする、初心者さんに向けに書いたということをご理解いただければと思います。
まったくの初心者さんで、アイリッシュ音楽について何の知識がない方でしたら、上記のようなことに気を付けておけば、少なくとも間違った方向に進んでしまうことはないと思います。
実際にアイルランドという国で、アイリッシュ音楽界を代表する奏者さんや、フィドルの有名な指導者さん、アイルランドの大学でアイリッシュ音楽を教えている先生、そして現地でアイルランド人向けに、アイリッシュ音楽の書籍を執筆されている方、こういった方々のほとんどがアイルランド人ですから、上に書いたようなことは決して間違いではないと思っています。
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ピート・クーパーという方が書いた「フィドルが弾きたい」という教則本には、前書きとして以下のようなことが書いてあります。
↑↑こちら↑↑は原書版に載っている前書きです。
↓↓こちら↓↓は日本語版に載っている上記の訳です。
まえがきに書いてある通りですが、この教則本は全くの初心者向けの教則本ではありません。
では、どんな方であれば、この教則本を使ってフィドルの学習を開始できるかというと、
原書版では「anyone who has reached Grade 2 (Royal Irish Academy of Music or the Associated Board) or its equivalent should have noproblem making a start here.」と書かれています。
ここの部分は日本語版では「ロイヤルアイリッシュ音楽院や音楽検定のグレード2、また同等のレベルであれば~」と訳されています。
多分この時点で、何のことか理解できない方もいらっしゃるのではと思います。
このあたりのことに関して、少し補足させていただきたいと思います。
まず、原書版で「Grade2 (Royal Irish Academy of Music or the Associated Board)~)」と書かれている箇所ですが、
このうちの"Royal Irish Academy"はアイルランドにある王立音楽院のことを指しています。日本でいうところの音大に相当する高等教育機関です。
日本語訳版では「ロイヤルアイリッシュ音楽院」と呼んでいますが、「アイルランド王立音楽院」と呼ぶことの方が多いと思います。
「the Associated Board」は、「Associated Board of the Royal Schools of Music (略してABRSM)」のことを指しています。
ABRSMは英国王立音楽院が実施している音楽の検定試験です。
英国王立音楽院の音楽検定は、「英国王立音楽検定 (アソシエイテッド・ボード検定)」と呼ばれ、日本でも実施されています。(日本語訳版ではただ「音楽検定」とだけ書いてありますが・・・)
下の画像は、Associated Boardの日本支部のホームページからの抜粋です。
ピート・クーパー氏の書いたフィドルの教則本の前書きに書かれていることは、つまるところ、アイルランド王立音楽院か、英国王立音楽院のいずれかが実施する、音楽検定試験の「2級」に合格した人であれば、問題なく使えますよ、といったことが書いてあるのです。
「アイルランド王立音楽院」や「英国王立音楽院」が実施している音楽検定試験ですが、どちらの音楽院も「アイリッシュ音楽」や「フィドル」のための検定試験は実施していません。
これらの音楽院が実施しているのは、クラシック音楽のための検定試験です。
つまりピート・クーパーのフィドルの教則本を使ってフィドルの勉強を始めるためには、フィドルを始める前に、クラシック・ヴァイオリンの検定試験の2級に合格できるくらいのレベルを身に付けておかないと駄目ですよ、といったことになるのです。
そんなわけで、フィドルしか弾いたことがない私からすると、この教則本にはのっけから不思議なことが書いてあるなと感じてしまいます。
下の画像は、英国王立音楽検定(アソシエイテッド・ボード検定)のテキストです。
実はこの「英国王立音楽検定(アソシエイテッド・ボード検定)」は、イギリスとアイルランドではとてもポピュラーです。聞いた話によると、英連邦の国々でも実施されていて、英連邦の国々でもポピュラーだそうです。
日本では、音楽のグレード試験というと、ヤマハやカワイが独自に行っているものを想像しがちですが、イギリスやアイルランドで音楽のグレード試験といえば、ほぼこの英国王立音楽検定(アソシエイテッド・ボード検定)は試験のことを指すような感じです。
下の画像は、アイルランドで発行されている、アイルランド人のフィドル奏者さんが書いたフィドルの教則本です。
2冊写っていますが、どちらも楽器を持ったことがない、楽譜の読み書きや、音楽の基礎知識のない完全なる初心者さんの状態からでも始められるように書かれてあります。
まったくの初心者さん使えるように書かれているので、音楽検定の2級に合格しなくても始めることが可能です。
著者のピート・クーパー氏は、
・アイルランド人ではありません。(イギリス人。アイルランド系英国人ではないようです)
・原書版の出版社はアイルランドの出版社ではありません。(アメリカの出版社)
・著者はアイリッシュ音楽の指導者資格は有していません。
・著者はアイルランドの音楽界ではほとんど知られていません。
・この教則本はアイルランドの教室では使われていないと思います。
・情報が古い?(初版が1995年で、改訂版などは出ていないようです。)
上記に挙げたことは、多分事実だと思います。もし間違っているところがあったら、ご指摘いただけるでしょうか。
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「フィドルが弾きたい」というアイリッシュ・フィドルの教則本を書いた、ピート・クーパー氏はイギリス人です。
イギリス人であって何か悪いことがあるのかというと、著者がイギリス人であること自体には何の問題もないのかなとは思います。
ただ、一応この本は「アイリッシュ・フィドル」のための教則本です。
アイルランドという国の、伝統的な音楽の奏法について、書かれていなければいけない本です。
ですが著者はイギリス人です。
これは紛れもない事実です。
ちなみにアイルランドには、アイルランドを代表する、アイルランド人のフィドル奏者さんによって書かれた教則本が売られています。
この記事を書いている私「Taka」はアイルランドに住んでいた時に、アイリッシュ音楽に出会って現地でフィドルを始めました。
私の場合は教室に通い、先生に就いて習いましたので、教則本を使ったことがありません。
先生は当然といえば当然ですが、先生はアイルランド人の方でした。
普通教室や先生を選ぶ時に、先生のプロフィールを見たり、先生のこれまでの実績などを見た上で決めるのは普通のことだと思います。
本を選ぶ時も、著者の略歴などを見ると思います。
例えばですが、日本人のどなたかが、何かのきっかけで中国の「二胡」に興味を持って、演奏を学びに中国に留学したとします。
現地で教室や先生を探すとなったときに、わざわざ日本人の先生が教えている教室を探すことはしないのではないかなと思います。
中国まで行って、日本人の書いた教則本も買わないと思います。
それと同じで、私であればアイルランドに行って、わざわざ外国人(アイルランド人から見ればイギリス人は外国人です)の先生から習おうとは思わないです。(その人がアイルランドの音楽コンクールなどで優勝していて、誰もが認めるアイリッシュ音楽界を代表する演奏家さんであれば別ですが・・・)
また、アイルランドに行けば、アイルランド人のフィドル奏者さんが書いた教則本がありますし、そちらの方が広く出回っていますので、わざわざ外国人の書いた教則本は買わないと思います。
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ピート・クーパー氏の書いた教則本の原書版は「The Coplete Irish fiddle Player」というタイトルで「MelBay」というアメリカの出版社から発行されています。
ご存じの方はお判りいただけると思うのですが、「MelBay」という出版社はある意味で、ものすごい出版社なのです。
MelBayは音楽に特化した出版社のようで、ありとあらゆるジャンルの音楽の教則本や楽譜集を出版しています。
手に入らない情報はないのではと言えるほど、色々なジャンルの音楽、色々な楽器の教則本を出しているのですが、MelBayが発行しているアイリッシュ音楽関係の教則本にはけっこう問題もあるのです。
例えばですが、MelBayから「Complete Irish Flute Book」というアイリッシュ・フルートの教則本が出版されています。
この教則本には、教則本に掲載されている曲の模範演奏の音源が付いています。
↓↓こちら↓↓がその模範演奏になります。
アイリッシュ音楽について、それなりにご存じの方でお分かりいただけると思いますが、この演奏では模範演奏にならないと思います。
模範演奏といっても、どちらかというと悪い見本になってしまいますね。
この教則本を使って、上手に弾けるようになることはないと思います。
「MelBay」という出版社は、そんな本を平気で出版してしまうような会社なのです。
そう、ピート・クーパー氏の書いた教則本も、同じ「MelBay」から出版されているのです。
アイルランドから遠く離れた日本では、英語で書いてあるからとか、外人(白人)によってから書かれたからことかで、安易にこのような教則本を手に取ってしまう方もいらっしゃるのかもしれませんが、内容をよく確認してからでないと、逆に教則本を使ったことによって、悪い弾き方を覚えてしまうことになるかもしれません。
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一つ上の章で、MelBayという出版社から出ているアイリッシュ・フルートの教則本の話をしました。
その教則本には、模範演奏の音源が付いているとお話ししたのですが、ピート・クーパー氏の書いた教則本にも模範演奏の音源が付いています。
日本語版を持っている方に聞いたところでは、日本語版には音源が付いていないとのことでした。
例えばですが、ピート・クーパー氏の書いた教則本に「The Silver Spear」という名前の曲が載っています。
原書版にはピート・クーパー氏自身が弾いた、模範演奏の音源が付いています。
↓↓こちら↓↓がその模範演奏の音源です。
この曲はアイリッシュ音楽の伝統曲です。
アイリッシュ音楽で弾かれている伝統曲は、楽譜通りに弾く音楽ではありませんので、弾き方は人によって様々です。
上のピート・クーパー氏の演奏を、単純に良いか悪いかといった感じで判断をすることはできないと思いますが、、、
例えば同じ曲を以下のように弾いている奏者さんがいます。
弾いているのはアイルランド人のフィドル奏者さんです。
弾かれている曲は、最初に載せたピート・クーパー氏が弾いている「The Silver Spear」と全く同じ曲です。
↓↓こちら↓↓も「The Silver Spear」の演奏です。弾いているのは、アイリッシュ音楽の世界では超有名なフィドル奏者さんです。
次も「The Silver Spear」の演奏です。弾いているのは、アイルランド人のフィドル奏者さんです。
いかがでしたでしょうか?
掲載した曲は全て「The Silver Spear」という曲ですが、それぞれ異なる演奏だったと思います。
先に述べた通り、アイリッシュ音楽は楽譜通りに演奏する音楽ではないので、演奏法は人によって様々なのです。
それなりにアイリッシュ音楽のことをご存じの方であれば、お分かりいただけると思いますが、ピート・クーパー氏の演奏にはちょっと物足りなさを感じるでしょうか。
初心者用の教則本の模範演奏なんだから、こんなもんでしょうと仰る方もいらっしゃるかもしれませんが、ピート・クーパー氏の演奏はソロでガチで演奏する時も教則本のデモ音源と同じような感じです。(彼のソロ・アルバムというのを聞いてみたのですが、ほぼ教則本の模範演奏と一緒でした・・)
ピート・クーパー氏の教則本には楽譜が載っていますので、楽譜通りに弾けばピート・クーパー氏みたいな弾き方になるかもしれません。
しかし、ピート・クーパー氏の演奏の後に載せた、他の3人の奏者さんのように弾いてみたいとなると、ピート・クーパー氏の教則本に載っている譜面と同じ通りに弾いても、彼らと同じような演奏にはなりません。
もしアイルランドに住んでいて、アイルランドでフィドルを始めるのであれば、私であればわざわざピート・クーパー氏の教則本は選ばないと思います。
もっと格好よく弾く奏者さんから、直々に習いたい思います。
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前の章で、「フィドルを弾きたい」というフィドルの教則本の著者である、ピート・クーパー氏の演奏を聞いていただきました。
アイリッシュ音楽に関してそれなりにご存じの方であれば、ピート・クーパー氏の演奏の実力がどれほどのものかお分かりいただけると思います。
演奏能力の高い、低いと、指導の上手い下手は関係ないと思います。
ピート・クーパー氏が、アイリッシュ・フィドルの指導をしてはいけないという決まりも、どこにもありません。
この記事を書いている私「Taka」も、フィドルの指導をしています。
私の場合は、フィドルの指導を始める以前に、自分自身がアイルランドでフィドルを習い、現地で指導者の資格試験に合格した上で指導をしています。
調べてみたところピート・クーパー氏は、アイリッシュ音楽の指導者の資格である「TTCT」は取得していないようです。
フィドルを教えるのに、指導者の資格がなければ教えてはいけない、ということはないのですが、私が習う立場でしたら資格を持っている先生を選ぶと思います。
また教える側の立場としては、「TTCT」というアイリッシュ音楽の指導資格は、アイリッシュ音楽の国際協会「Comhaltas Ceoltóirí Éireann」が発行している資格ですから、一応"公的な資格"になります。
アイルランド人の先生(もちろんイギリス人の先生)でも、この資格を持っている人が居ますし、Comhaltas Ceoltóirí Éireannの支部はイギリスにもあります。(青い太文字をクリックするとComhaltas Ceoltóirí Éireannのイギリス支部のサイトに飛びます)
下の画像は、Comhaltas Ceoltóirí Éireannの支部のロケーションマップです。アイルランドにはそこかしこに支部があります。イギリスにもそこそこの支部があります。
アイリッシュ音楽がどれほど弾けるのか、ちゃんと指導できるのかどうか、外国人(アイルランド人ではない)というだけで、「あいつちゃんと教えられるのか?」と怪しまれてしまうだけに、本当にちゃんと弾けたり、教えられたりするのであれば、こういう資格を持っていて損はないと思います。
ピート・クーパー氏がなぜこの資格を取っていないのか、謎と言えば謎です。
ただ、一応は試験ですから、試験を受けても、落ちてしまうということもあります。
もしかするとピート・クーパー氏は試験は受けたけど、合格はしていないという可能性もないこともないのかもしれません。。。
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下の画像は「Rebecca McCarthy Kent」という、わりと有名なアイルランド人フィドル奏者さんのプロフィールです。
略歴として〇〇コンクールで優勝したとか、〇〇音楽大学を卒業したといった経歴を書いている他、アイリッシュ音楽の指導者資格「TTCT」を取得していることも書いてあります。
アイルランド人の奏者さん、しかもけっこう有名な奏者さんでもこのように、自身のプロフィールに資格の有無を書くわけですから、資格は取っておいて損はないと思います。
下の動画が上にプロフィールを載せた「Rebecca McCarthy Kent」の演奏です。
アイルランドにはこのような奏者さんが"ごまん"と居るのです。
実は私「Taka」とRebecca McCarthy Kentは同じ年に、フィドルの指導資格試験「TTCT」を受験しているのです。
以下は免状の授与式の時に撮った記念撮影の写真です。
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この記事を書いている私「Taka」が知りうる限り、「フィドルを弾きたい」という教則本を執筆されたピート・クーパー氏は、アイルランドの音楽界でほとんど知られていないと思います。
私自身、アイルランドに住んで現地でフィドルを学んでいた時期があります。
住んでいた際に、現地の演奏家や指導者の方から、色々な有名なフィドル奏者の話を聞かされましたし、住んでいる時は有名な奏者さんのライブやコンサートにも行きました。
また現地のCD屋さんで売られているCDも買いました。買ったCDの中には、いわゆる昔からあるアイリッシュ音楽界の"大名盤"と呼ばれるものから、新しくリリースされる新譜など色々と購入しました。
多くのアイルランドの多くの人が参加する、大規模な音楽フェスティバルや、サマースクールなどにも参加しましたが、ピート・クーパー氏のことを誰からも一度たりとも聞いたことはことはありませんでした。。。
アイルランド人ではないのでしょうがないといえば、そうなのかもしれませんが、イギリス人でアイリッシュ音楽を弾く方は他にも多くいらっしゃいますし、著名なイギリス出身の演奏家さんもいらっしゃいます。
そう考えるとピート・クーパー氏は無名すぎるほど、無名といっていいと思います。
少なくともここ10数年間、アイルランドのメディアに登場したことは、ほとんどないか、全くないと思います。(ちなみに来日公演はしているそうです)
それが、ピート・クーパー氏の書いた教則本とどう関係するのかと言えばですが、
例えば、私の教室にいらっしゃる生徒さんには、ヴァイオリンの経験者の方もけっこういらっしゃいます。
これまでに、私の教室にいらっしゃる多くのヴァイオリン経験者の方から、
・〇歳までヴァイオリンを習っていました。スズキ・メソードの〇巻までやりました。
とか、
・篠崎教本の〇巻までやりました。
・新しいヴァイオリン教本の〇巻までやりました。
といったことを、何十回となく聞いているのです。
つまりヴァイオリンを習われている方の間で、「スズキ・メソード」とか「篠崎教本」とか「新しいヴァイオリン教本」は共通の認識事項になっているのだと思います。
「〇〇という教則本の〇巻までやった」と聞けば、その人のレベルが推察できるのだと思います。
ヴァイオリンの有名な教則本
ヴァイオリンを習われている方で、これらを知らないという方はいないらしいです。
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もしアイルランドで、「私はピート・クーパー氏の"フィドルを弾きたい"を使ってフィドルの勉強をしています。今、何ページの〇〇という曲のところまで行きました。」と言っても、分かる人はいないのではないかなと思います。
これがアイルランド人の著者が執筆されたフィドルの教則本であれば、こうはならないと思います。
下の画像は、アイルランドで発行されている、アイルランド人のフィドル奏者さんが執筆されたフィドルの教則本です。
上の二冊に比べると、ピート・クーパー氏の教則本は、マイナーすぎるくらいマイナーだと思います。
私が思うに、恐らく「フィドルを弾きたい」という教則本は、アイルランドの教室では使われていないのではないかなと思います。(100%そうだという確証はありませんが・・・)
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掲載されている情報がやや古いと思います
またこの教則本は初版が1995年と、最初に発行されてから30年近く経っているのですが、一回も改定されていないようです。
教則本の巻末にお勧めのCDや、アイリッシュ音楽関係の書籍のリストが載っているのですが、それが1995年当時のままなのです。
CDや書籍類はその後増えていますし、1995年当時買えたCDで現在は廃盤となってしまっているものもありますので、この辺りをちゃんとアップデートするのも著者としての定めだと思います。
「フィドルが弾きたい(原書版)」の巻末に載っているお勧めのCDのリスト
初版が発行された1995年当時のままの情報が記載されています
下の画像は私「Taka」が持っているアイリッシュ・フィドルのCDです。
棚に入っているのを適当に取って並べただけなので、他にもたくさんあるのですが、これらのCDの大半はピート・クーパー氏の教則本には紹介されていません。
ジャケットを見て誰の何というCDか分かる方であれば、お分かりいただけると思いますが、アイリッシュ音楽界でわりと話題になったアルバムも写っています。
アイリッシュフィドルを完全制覇できる本であるのな、下に写っているようなCDも紹介しておいても良いのになと思います。
Matt Cranitch(マット・クラニッチ)というアイルランド人のフィドル奏者さんが執筆した「The Irish Fiddle Book」というフィドルの教則本は、初版が発行されてから35年以上経ちますが、巻末のCDや参考図書類のリストは定期的にアップデートされています。
下の画像はマット・クラニッチ(Matt Cranitch)のフィドルの教則本の巻末に掲載されている、お勧めCDのリストです。わりとここ最近にリリースされたCDも掲載されています。
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「フィドルを弾きたい」という教則本の和訳本は、Tamikoさんという方が翻訳されているようです。
このTamikoさんという方もフィドルの講師をされているようです。
実をいうと、このTamikoさんという方から一、緒にライブで演奏しないかと誘われたことがあり、実際に一緒に演奏したことがあります。
このホームページ上では、彼女との演奏がある旨のお知らせは一切しませんでした・・
なぜかというと、、、
事前に演奏会用の演目作りのために、お互いの演奏を録音したものを送りあったりしたのですが、Tamikoさんの演奏を聞いてびっくり!
えっ、この演奏でライブをやっちゃうんですか!?といったレベルの演奏だったのです・・
フィドルの演奏歴が20年以上あり、10年以上フィドルの講師をしていて、アイリッシュ音楽の国際コンクールであるフラーにも出場経験があると聞いていたので、きっととても上手な方なのだろうと思っていたのですが、演奏を聞いてみてびっくり、人様からお金を取ってフィドルを教えたり、ライブをやったりするレベルかなぁ?と思ったのです。
そんなことから、私のホームページ上で、Tamikoさんとのライブがあることをお知らせすることは、控えさせていただいた次第なのです。
なによりも一番びっくりしたのは、Tamikoさんご自身のブログ(note?)で、フラーと呼ばれるアイリッシュ音楽界最高峰のコンクール(コンペティション)に出場したと書いていたことでした。
実は彼女がそのコンクールに出場したことは、一度もないです。
実際のところは、コロナ禍中にオンラインで開催された、日本限定開催のイベントに出ただけなのに、あたかも物凄い大会に出て、現地の審査員からこんなに評価されました!といったこと書いているのです。
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Tamikoさんという方は、「フィドルを弾きたい」の原書版の著者であるピート・クーパー氏のお弟子さんだそうで、師匠と同じくTamikoさんもフィドルの指導者の資格は取得されていません。
だからといって、この方からフィドルを習ってはいけないという決まりはありませんので、Tamikoさんという方から習っても良いと思う方は指導を仰いでみてもよいのではないでしょうか。
彼女の翻訳された教則本の表紙には「アイリッシュフィドルを完全制覇」と書かれていますが、Tamikoさんに指導を仰いで本当に完全制覇できるかどうかは分かりません・・・
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ここまで、フィドルの教則本について色々と書いてきました。
かなり長々といろいろと書いてきましたが、この記事がフィドルの教則本選びの参考になれば幸いです。
内容的にはピート・クーパー氏が書かれた「フィドルが弾きたい」という教則本を批判するようなことばかりになってしまいましたが、最近までこの教則本の存在を知らなかったもので、最近になって原書版を手に取って読んでみたのですが、書かれている情報に首をかしげるところがあったので、そのことを色々な方に知っていただきたいなと思い、この記事上で疑問点などを書いた次第です。
教則本を使われるのであれば、以下の2冊のいずれかが無難だと思います。
恐らくオレンジ色の表紙の方が入手しやすいと思います。
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