世界最高峰のアイリッシュ音楽の祭典「Fleadh Cheoil na hÉireann」通称"フラー"に参加するためにアイルランドに行ってきました。
「Fleadh Cheoil na hÉireann」とはアイルランド語で、日本語に訳すと「アイルランド音楽祭」という意味になります。
Fleadh(祭典)、Cheoil(音楽)、hÉireann(アイルランド)
現地では単に「Fleadh(フラー)」と呼ぶことが多いです。
フラーは70年近い歴史を誇る伝統音楽と伝統舞踊のフェスティバルで、期間中に「All Ireland Fleadh」と呼ばれるフィドルやティンホイッスルなどアイルランドの伝統楽器と伝統舞踊のコンクールが開催されます。
この「All Ireland Fleadh」の優勝者は「All Ireland Champion」と呼ばれ、アイルランド音楽の世界で最も名誉のある賞となっています。
Fleadhのフィドル部門の優勝者。このコンクールでの優勝をきっかけにプロデビューする奏者さんも居るそうです。
アイルランドでは例年4月より各県*で県大会が開催され、県大会で2位以内に入ると地区大会*に進むことができます。地区大会で2位以内に入ると晴れて全国(世界)大会「All Ireland Fleadh」に出場することができます。
(*アイルランドには32の県があります。) (*アイルランドには4つの地区があります。日本の関東地方、近畿地方に相当するような感じです。)
アイルランドには32の県があり、4つの地方に分かれています
Fleadhはアイルランドからの移民が多いアメリカやイギリスでも予選大会が開催されていて、全国大会にはアメリカ大会、イギリス大会を勝ち抜いた奏者も出場します。
現在は日本でも予選大会が開催されており、日本では6月に予選が開催されました。
現在は日本でもアイリッシュの国際コンクール(コンペティション)に参加するための予選大会が開催されています。
私も今年の予選大会に参加しており、一応予選を通過し本戦に出場できることになったのですが、本戦に参加するかどうかはギリギリまで迷っていました・・・
日本はまだまだコロナが落ち着いたとは言えないような感じで、大手を振って海外旅行という気にはなれないような状況ですから、今年の渡航は見送ろうかなぁとも思ったのですが・・・
アイルランドもコロナ渦で、フラーも昨年、一昨年と開催されておらず、私もここ2年ほど現地のリアルなアイリッシュ音楽を見聞きしていませんでしたので、なんとなく浦島太郎感?みたいなのを感じていまして、このままでは時代の流れに取り残されてしまいそうな気もしたので、アイリッシュ音楽界の現況を知るべく思い切って渡航することに決めました。
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■ オール・アイルランド・フラー参加記 出発編 ■
今回は直前に航空券を取ったのもあって、
行きは成田→ヘルシンキ→ダブリン
帰りはダブリン→パリ→羽田
という変則的?なフライトとなりました。
日程は8月5日~9日までの4泊6日というスケジュールで行ってきました。
上の画像は行きに乗ったフィンエアーの機体です。
フィンエアーは北極点を通過するルートを飛ぶようで、フライトの途中で「あなたは北極点の上を飛びましたよ」という証明書のようなものを貰いました。
経由地のヘルシンキ空港には「ムーミン・コーヒー」なるカフェがありました。
午前8時15分発のダブリン行きでアイルランドに向かいます。
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早くもダブリンに到着。こちらは空港で借りたレンタカー。スズキのスイフトです。
マニュアル車です。アイルランドのレンタカーはマニュアル車が標準です。
いざフラーの開催地、ウエストミーズ県*に向けて出発!
*フラーの開催地マリンガーがある県
フラーは持ち回り開催で、一つの開催地で2回か3回開催すると、他の所に移るといった感じで開催されています。
前回大会(2019年)はラウズ県のドロヘダという所で開催されました。
私は前回大会も参加しており、こちらの記事で前回大会の模様をご覧いただけます。
今回はアスローン(Athlone)という町にあるホテルに宿泊しました。
アスローンはフラーの開催地であるマリンガーと同じウエストミーズ県の町です。
シャノン川*沿いのなかなか感じの良いホテルでした。それなりに高かったですが・・・直前に手配したのでしょうがなかったのです・・・(*シャノン川 = アイルランド最長の川)
ホテルにチェックインした後、フラーの開催地であるマリンガーへと向かいました。
毎度のことですが、ものすごい人手です。。例年50万人もの人がフラーに訪れるそうです。
話には聞いていたのですが、ほとんどの人がマスクをしていません。
私は念のために滞在中ずっとマスクをしていましたが・・・
マリンガーの町中には「ジョー・ドーラン」という歌手の像があります。
ジョー・ドーラン(Joe Dolan)はこのマリンガーの出身で、アイルランドのポピュラー音楽界を代表する歌手の一人でした。私が初めてアイルランドに留学した時のホームステイ先のホストマザーがこの歌手の大ファンでした。
こちらの新聞にもフラーのことがトップに載っています。こちらにはアイルランドの大統領が写っています。
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■ オール・アイルランド・フラー、作曲部門編 ■
こちらは私が出場する「新曲作曲部門」のコンクールが行われる学校の校舎です。
フラーのコンクールは所謂普通の学校の校舎で行われることが多いです。
フラーのコンクールのタイムテーブルです。私の出場する「Newly Composed Tunes」はHoly Family NS*のVenue 4Bで行われます。
(*NS = National Schoolの略で所謂公立小学校のこと)
ここがVenue 4Bです。
中はこんな感じです。所謂普通の教室といった感じでしょうか。大概のコンクールはこんな感じ所で行われます。
作曲コンクールの出場者のリストです。この部門では自作の曲を弾いて、審査員が順位を決めます。
多くの奏者さんの横に「CCÉ」と書いてありますが、CCÉはアイリッシュ音楽の国際協会のことです。アイリッシュ音楽の多くの奏者がこの協会に所属しています。
ちなみにですが、4番の「Laoise Ní Chinnéide T CCÉ Ormond, Tiobraid Árann」という奏者さんですが、
これは「Tiobraid Árannという場所の、CCÉ Ormond支部に所属する、Laoise Ní Chinnéide Tさん」ということになります。
Tiobraid Árannはアイルランドの地名です。Tiobraid ÁrannはTipperaryのアイルランド語綴りバージョンです。お名前の「Laoise Ní Chinnéide T」は分かる人は分かりますが、女性の方です。名前に「Ní」が付いている人は普通は女性です。「Laoise(リーシャ)」も女性の名前です。「Chinnéide」は「Kennedy(ケネディ)」のアイルランド語綴りです。男性だと「Cinnéide」になります。最後の「T」は意味不明です。多分タイプミスでしょうか?
ちなみに私「Taka」は前回大会のこの部門で2位に入賞しています。
今年のプログラムの前回大会の入賞者一覧コーナーに私の名前が載っていました。
上が今年の作曲コンクールの入賞者です。
残念ながら私は今年は入賞できませんでした。
優勝した子はティペラリー出身の若い女の子でした。
(先ほどの出場者リストの説明で例に挙げた子です)
審査員の方が入賞者の曲に対して講評を述べていたのですが、一位になった子の曲は「Paddy O'Brienを思い起こさせるような、very Tipperaryな曲で、とても気に入った」とべた褒めしていました。
2位の子は多分まだ小学生だと思うのですが、曲はマーチで、けっこうシンプルな感じの曲だったのですが、審査員曰く、シンプルながらもとても印象に残る曲で、ずっと頭の中でループしていたと言っていました。
3位の人の曲はなんとなくFinbarr Dwyerちっくな感じの曲だったと思います。
ちなみにこのコンクールでは3位までが表彰の対象なのですが、今回は3位と4位がとても僅差だったそうで、4位の人の曲もとても良い作品だったのでぜひ表彰式で名前を読み上げたいということで4位の人も紹介されていました。4位の人の曲はEd Reavy的な感じの曲でした・・・
1位がPaddy O’Brien*風、3位がFinbarr Dwyer*ちっく、4位がEd Reavy*的・・・
(*Paddy O'Brien、Finbarr Dwyer、Ed Reavyはアイリッシュ音楽の世界ではとても有名な作曲家さんたちです。アイリッシュ音楽で演奏されている楽曲はアイルランドに昔から伝わる作者不詳の伝統曲が多いのですが、作曲家が明らかになっている曲もそれなりにあります。上に挙げた作曲家はセッションなどでも弾かれている有名な曲をたくさん残しています)
審査員の好みがきっとそういうことなんでしょうね~。
審査員の好みがもろに反映された上での結果って感じでしょうか。
こういう作風なら入賞できる、できないの基準は基本的にはないらしいのですが、私的には1位になった子や4位になった子のように、あの若さでPaddy O'BrienやEd Reavyを思い起こさせるような曲が作曲できるというのがちょっと衝撃的でした・・・
私もこの辺りの楽曲を普段からよく聞いて、よく弾いておかないといけないなと思いました。
上に名前を挙げた作曲家の楽曲が収められている楽譜集です。
真ん中がPaddy O'Brienの曲集、右がEd Reavy、左はRichie Dwyerの曲集です。Richie DwyerはFinbarr Dwyerの兄弟です。RichieとFinbarrを一緒にしてはいけないのですが、Finbarr Dwyerの曲集がなかったので、参考までに兄弟であるRichie Dwyerの曲集を載せてみました。
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■ オール・アイルランド・フラー、フィドルの部編 ■
上の画像の建物はフィドル部門のコンクールが行われた「マリンガー・アーツ・センター(Mullingar Arts Centre)」です。
これが今年のフィドル部門の参加者のリストです。
なんと私「Taka」がトップバッターです。
この参加者リストを見て思わずびっくり。
アイリッシュ音楽にそこそこ精通している方ならお分かりいただけると思うのですが、、
たとえば10番のDylan Carlosは前回大会の優勝者で、既にプロ活動をしていて、CDなんかも出している奏者さんです。
16番のJason McGuinnessは昨年のフラーの代替大会として開催されたFleadhFestで優勝した奏者さんです。
13番のJamie SmithはColette O'Learyというアコーディオン奏者とユニットを組んでプロ活動をしている奏者さんです。ちなみにColette O'LearyはBumblebeesというシャロン・シャノンの妹がやっていたバンドのメンバーだった人です。
12番のSarah O'Gormanは15歳以下、18歳以下の時代に優勝の経験がある超絶に上手い奏者さんです。
2番のSinéad McKennaは前回大会で2位だった奏者さんです。
他にも既に有名人といえるような奏者さんが何人も参加していて、かなりのレベルの高さです。
結局今年のフィドルのコンクールは上のような結果となりました。
1位はSarah O'Gorman(セーラ・オゴーマン)でした。
2位は前回大会でも2位だったSinéad McKenna(シネイド・マッケンナ)でした。
3位は昨年のFleadhFestで優勝したJason McGuinness(ジェイソン・マクギネス)でした。
まあ順当な結果といえば、そんなところなのでしょうか。
私は何の結果も残せていませんが・・・
恥ずかしながら私のレベルでは、このようなコンクールの場ではぜんぜん歯が立たないのです・・・
もしまた日本代表として参加することがあるのであれば、自信をもって日本代表ですと言えるくらいのレベルで演奏ができるようにならないといけないと思いました。
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こちらがフィドル部門で優勝したSarah O'Gormanです。アイルランドの国営放送局「RTÉ」のサイトに彼女の活躍のことが紹介されていました。
ちなみにこちらがSarah O'Gormanの演奏です。(コンクールの時の演奏ではありません。)
こちらは2位のSinéad McKennaの演奏です。(こちらもコンクールの時の演奏ではありません。)
Sinéad McKennaは北アイルランドはティロン州の有名な音楽一家の出身で、以前にSinéadの家族を紹介したドキュメンタリー番組が放映されたことがありました。
上の番組の冒頭で「For the McKenna family, this summer and every summer belongs to music」と言っているのを聞いて、日本でアイルランド音楽を弾いたり、習ったりするのとは環境が大違いだわと思ったものです。
この番組が放映された時はまだ幼かったSinéadがシニアの部のコンクールに出てくるとは・・・
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■ オール・アイルランド・フラー、主種雑多の部編 ■
こちらはフラーのMiscellaneous部門のコンクールが行われた会場です。
「Town Band Hall」というマリンガーの町の中心部にある施設で、普段は地元のマーチングバンド?の練習場所として使われている施設だそうです。
中はこんな感じです。
こちらが「Miscellaneous」部門の参加者のリストです。
「Miscellaneous」とは種々雑多という意味で、その意味の通り種々雑多な楽器の部門になります。単独の部門が設けられていない楽器は、この部門に参加することになります。
アイリッシュ音楽では割とメジャーな楽器のイメージがあるブズーキですが、実は単独の部門が設けられていないので、この部門に出ることになります。
私はヴィオラで参加しました。
こちらが主種雑多部門の結果です。
1位はフィドル部門で優勝したSarah O'Gormanでした。彼女はヴィオラを弾いても凄かったです。。。。ブズーキで参加した奏者さんが2位と3位に入りました。
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私自身は今回のフラーでは何の結果も残せなかったのですが、アイルランド音楽界の現在地点みたいのを垣間見れたような気がして、フラーに来てみてよかったと思いました。
コロナ渦もあってほぼ浦島太郎状態だったのですが、今回のアイルランド滞在でまた目標を定め直すことができたような気がします。
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■ オール・アイルランド・フラー参加記 テイトーパーク編 ■
フラーの翌日はPCRテストを受けにダブリンに行きました。
日本に帰国する前にアイルランドでPCRテストを受けて、陰性であることを証明しないと日本に帰れないのです・・・
テストの結果が出るまでのヒマつぶしを兼ねて、テイトーパーク(Tayto Park)へ。
Tayto Parkはアイルランドのソウルフード?ともいえるアイルランドを代表するポテトチップス「Tayto」のテーマパークです。
色々なアトラクションや、動物園などがあるテーマパークです。
私がアイルランドに住んでいた11年前にもあったのですが、そのころに比べるとだいぶグレードアップしています。
テイトーパークのお土産屋さんです。
テイトーのキャラクターである「Mr. Tayto」の等身大のぬいぐるみが300ユーロで売られていました。
思わず買ってしまいそうになったのです、なんとか踏みとどまることができました・・
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夕方になって午前中に受けたPCRテストの結果が出ました。
陰性でほっとしました。
音楽コンクール以上に、こっちの結果にドキドキしていました。
もし陽性になってしまうと、確かスムーズに入国できなったような・・・
これで無事に日本に帰れます。
PCRの検査が陰性でホッとしたので、夕食はスーパーマックスで食べました。(あまり関係ないか・・)
スーパーマックスはアイルランド版のファーストフード店でアイルランド中にお店があります。マクドナルドとケンタッキーを足したような感じのお店です。
アイルランドでの最後の晩餐は、スーパーマックスのカレーフライとチーズバーガーです。
カレーフライ(Curry Fries)は所謂フライドポテト(アイルランドではチップスと言いますが・・)にカレーがかかったものです。カレーは日本のカレーに似てないないこともないと思います。
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■ オール・アイルランド・フラー参加記 帰国編 ■
帰国前日は、ダブリン空港の真横にあるホテルに泊まりました。
部屋はそこそこ広くて快適でした。
朝食はバイキング形式でした。
所謂アイリッシュブレックファストです。おかわりができるのが味噌です。3回くらいおかわりしてしまいました・・
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フライトの3時間前に空港に着いたのですが、ものすごい混雑でチェックインに1時間半かかりました。
ヨーロッパには職員が足りなくて混雑している空港が多いと聞いたのですが、ダブリン空港もそうだったのでしょうか・・・
この後パリへと飛んで、それから羽田へ向かう便に乗ります。
帰りの便はJALにしました。。
行きは北極点経由だったのですが、帰りはこんな飛行経路で東京に戻ったようです。
カスピ海の真上を飛んできたんですね。。。
無事に羽田空港に到着。
日本に入国する際に「My SOS」というアプリで事前に色々な手続に済ませておかないと、スムーズに入国できないそうです。
ワクチンを接種済みで、PCRテストが陰性だと青い画面が表示されるそうで、画面が青になっていれば何事もなく入国できます。
海外渡航先でのPCRテストで陽性になってしまうと、日本に帰ってこれず現地で延泊することになり、延泊代に40万円かかったという話もあるそうです。
こういう話を聞くと自由に海外渡航できるのはまだまだなのかなと思ってしまいますよね。。。
アイルランドで買ってきたお土産です。
大部分は私の教室に通ってきてくださっている生徒さん用です。
テイトーグッズの大部分は私個人用ですが・・・