私がアイルランドで住むクレア州のフィークル村に、バイオリンの葉加瀬太郎さんがテレビ番組の収録で訪れたことがあります。
番組の内容は葉加瀬太郎さんが私のお隣さんのヴィンセント・グリフィンや、マーティン・ヘイズに指導を仰ぎ、アイリッシュのフィドルに挑戦するというものなのですが、アイルランド音楽を全く知らない人が見ても分かるよう、アイリッシュ音楽の基本的なことにも触れられているので、これからアイルランド音楽を始めてみようという人にはとてもためになる番組だと思います。
このページでは番組を短く区切りながら、解説を挟みつつ紹介していこうと思います。
番組のタイトルは「バイオリンは歌い、フィドルは踊る」です。
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番組の冒頭はバイオリンの練習の話だとか、本人の音楽観の話から始まります。自身のクラシックの演奏で色々と悩んでいたころにたまたまアイルランドの音楽と出会って、アイルランドのフィドルの演奏に魅かれるようになったそうです。
次の動画はこれからアイルランドを目指すシーンからの抜粋です。
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次の動画は凄く短いのですが、葉加瀬さんがアイルランド音楽のどの辺りに興味があるのかを語っています。
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次の動画では私の住むクレア州*の州都エニスで、葉加瀬さんがパブに繰り出すところから始まります。セッションをやっているパブを見つけて中へと入っていきます。(*動画ではクレア県と言っています)
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この動画ではアイルランド音楽がどのように人々の間で受け継がれてきたのかについて触れられています。「アイルランド音楽は楽譜を使うことなく日々の暮らしの中で人から人へと受け継がれてきた音楽です」と解説していますが、現地でこの音楽を学んでいる私から見てもまさにその通りの音楽です。
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この動画では葉加瀬さんがフィークル村に向かいます。そう私が住んでいる村です。葉加瀬さんフィークル村にぜひ会いたいフィドルの奏者が居るそうです。
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そしていよいよ葉加瀬さんが会いたかったフィドル奏者の家を訪ねます。
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葉加瀬さんの会いたかったフィドル奏者とは・・
私も葉加瀬さんが訪ねたマーティン・ヘイズのお家にフィドルのレッスンをつけてもらいに行ったことがあります。上はマーティンからレッスンを受けた時に撮った写真です。
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この動画はぜひご覧になっていただきたい動画です。葉加瀬さんがマーティン・ヘイズにどうやってフィドルを始めたかを聞いています。
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動画の中でも言っていますが、マーティンの家系は代々はこのお家で暮らしてきたそうです。
マーティンはお婆さんも、お父さんも叔父さんもフィドル奏者という代々アイルランドの伝統音楽を弾いてきた音楽一家に生まれました。
マーティンの叔父さんは「パディ・カニー(Paddy Canny)」といって、1950年代にカーネギーホールでアイリッシュフィドルのソロリサイタルを開いた伝説的なフィドル奏者です。
フィドルはお父さんと始めたそうです。
お父さんと向かい合って、お父さんが弾くのを見よう見まねで覚えていったそうです。
譜面を使うことはなかったそうです。
私がマーティンからレッスンを受けた時も譜面は一切使いませんでした。
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次の動画では葉加瀬さんがマーティン・ヘイズに誘われてフィークルのパブで行われているセッションに行くシーンから始まります。
動画の中で紹介される創業200年になるパブというのは「ペパーズ(Pepper's)」というパブのことです。
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動画の中でも紹介されている通り、ペパーズは200年の歴史の持つパブで、毎週水曜日には伝統音楽のセッションが行われています。ペパーズについてはよかったらこちらのページもご覧になってみてください。
ちなみにペパーズのホームページには私がフィドルを弾いている写真が使われています。(顔は写っていませんが・・)
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次の動画では地元のケーリーバンド*「タラ・ケーリー・バンド(Tulla Ceili Band)」が紹介されています。「ケーリー・バンド」とは「ケーリー(Ceili)」で演奏するバンドのことです。「ケーリー(Ceili)」とはアイルランド語で「集会」とか「会合」という意味の言葉ですが、アイルランド音楽やアイリッシュダンスの世界では「踊りの会」を意味します。アイリッシュ・ダンスの一種類である「セットダンス」を踊る席で音楽の伴奏を担当するバンドが「ケーリー・バンド」です。アイリッシュダンスといっても、リバーダンスのようなダンスの伴奏はしません。「タラ(Tulla)」はフィークルの隣の村で、タラで結成されたケーリー・バンドなので「タラ・ケーリー・バンド」という名前になりました。動画でも紹介されていますが、結成65年になる老舗のケーリー・バンドです。CDも出ていますので、ぜひ聞いてみることをお勧めします。(iTunesでダウンロード販売もしています)
タラ・ケーリー・バンドが結成50周年を記念してリリースしたCDです。
これからアイルランド音楽を始めようかという人は必聴のアルバムです。
またアイリッシュのCDを買いたいけど、どれを買っていいか分からないという方にも最初の一枚としてもぜひお勧めです。ジャケットの写真をクリックすると販売サイトに移動します。(CD&ダウンロードを選べます。)
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タラ・ケーリー・バンドの結成50周年を記念して出版された本です。
フィークルやタラなど東クレア地方の音楽について知るのにためになる本です。
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次のシーンはペパーズでのセッションの場面となります。といってもこれは普段やっているセッションではなく撮影のために特別にやっているセッショです。なお普段のセッションではドラムスは入りません。
アイルランドの演奏家の大半が別の仕事を持っているのは本当の話です。
アイルランドに行ってみればお分かりいただけると思いますが、実際のところアイルランド国内でもアイルランドの伝統音楽はそれほど盛んではありません。アイルランド人の間で普通に人気のある音楽といえば、ロックやポップスなどの所謂普通の大衆音楽で、伝統音楽というと日本のお琴だとか三味線と言った純邦楽に相当するような感じで、ロックやポップスといった大衆音楽に比べればマーケットの規模は非常に小さいです。
それだけにアイルランドの伝統音楽の演奏で生計を立てていくのは、アイルランド国内ではなかなか考えらないこととなっています。
現に私のお隣に住んでいるフィドル奏者のヴィンセント・グリフィンは、アイルランドの伝統音楽のコンクールで優勝したこともある優れた演奏家ですが、本業は農業です。「アイルランド音楽の世界」では誰から認められている存在ですが、あくまでも「アイルランド音楽の世界」の中だけの話であって、ダブリンの町中で道行く人に「ヴィンセント・グリフィンを知っていますか?」と尋ねても知っている人は皆無でしょう。日本で人間国宝のお琴の奏者が目の前から歩いてきても、それに気が付くか人はそれほど多くないのと似ているでしょうか。私が住んでいる家の大家さんは、自分の国の伝統芸能にはそれほど関心がない人なので、お隣にヴィンセント・グリフィンという偉大なフィドル奏者が住んでいるのに、彼の演奏する音楽にはあまり興味がないみたいです。
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この動画では葉加瀬さんもセッションに参加します。
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ちなみに上の動画にちらっと私が写っています。
下の画像はちらっと写った部分から切り出したものです。
なんで写っているかといえば、実は私もタラ・ケーリー・バンドの一員なんです。。というのは冗談なんですが、まあ色々とあってここで一緒に演奏することになってしまったのでした。。
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この動画ではアイルランドの伝統音楽は即興演奏なので、ついていくのが行くのが大変との解説が入っています。そうなんですアイルランド音楽は楽譜がなく、基本的に演奏しているその場で、弾き方を考えながら弾いていきます。クラシック音楽のように譜面を見て弾く音楽に馴れている人だと、なかなか弾けるようにはなりません。
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このシーンでは葉加瀬さんがセッションについていけないので、一旦セッションの場から離れ一人で愚痴をこぼし始めます。
耳がついていかないと言っていますが、多分葉加瀬さんにとってはアイルランド音楽は馴れない外国語を話すのと同じような感じなんだと思います。
日本語が話せるからといって、他の外国語も話せるかというとそうではないのと同じで、クラシックバイオリンが弾けるからと言って、アイリッシュフィドルも弾けるかというと決してそうではないのです。
文法(基礎技術)や単語(楽曲)が異なりますから、どれだけクラシックバイオリンを上手く弾けたとしても、まずアイリッシュフィドルの文法や単語を基礎から学ばなければ、いつまでたってもちゃんと弾けるようにはなりません。
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この動画では葉加瀬さんがタラ・ケーリー・バンドのリーダーのマーク・ドネラン(Mark Donnellan)を訪ねます。番組の中では「ドネリン」と紹介されていますが、実際の発音は「ドネラン」に近いです。
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この動画ではマークが自身の音楽観について語っているのですが、なかなか良いことを言っています。
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葉加瀬さんから「毎日の暮らしはどうですか?」尋ねられて、
こう、答えています。
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そして次のように続きます
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アイルランド音楽がそれだけ日常の生活に密着しているからこそ、こういう風に音楽と接することができるのかなと思います。
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これは本当その通りですね!
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そして最後に葉加瀬さんより「あなたにとって音楽とは何ですか?」尋ねられて、
と、こう答えています。
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アイルランドの音楽、特にフィドルやアイリッシュハープなどといった楽器を使う伝統音楽は、それを弾いている人たち自身は音楽について深く考えることは本当に少ないと思います。
アイルランドの伝統音楽家にとっての音楽とは日々の生活が反映されたもので、演奏するその日、その日によって同じ曲であっても雰囲気や聞こえ方が異なるものです。
これが楽譜通りに弾かなければいけない別のジャンルの音楽だとどうなのかは分かりませんが、少なくともアイリッシュ音楽では、いつもいつも「こう弾かなければいけない」という決まりは一切ありません。
同じ曲でもいつも違う雰囲気で弾ける。それは曲に毎日の暮らしが反映されるからであって、音楽を日常生活から切り離して、音楽を音楽として単体で見つめてしまうと、色々なバリエーションは生まれてこないと思います。
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そして最後は次にように締めくくっています。
音楽は音で語るものであって、音を言葉で語るのは難しいのです。
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いよいよこのドキュメンタリーも佳境へと入っていきます。次の動画では私のお隣さんのフィドル奏者ヴィンセント・グリフィンが登場します。ヴィンセントについてはこちらのページもぜひご覧ください。
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そしてこれが最後の動画です。葉加瀬さんがアイルランド音楽を通じて感じたことなどを語っています。
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いかがでしたでしょうか?なんとなくアイルランド音楽ってこんな感じの音楽なんだということがお分かりいただけたでしょうか?
私自身はこの番組の収録現場にたまたま居合わせていて、自分の住んでいる村が日本で紹介されると聞いて、放映されるのを楽しみにしていました。
放映されたものを録画してもらって送ってもらって見てみたのですが、短いながらもアイルランド音楽を客観的に捉えられていて、なかなかいい番組だとおもいました。
アイルランドの音楽の演奏をアイルランドで学んでみたいと思っている方がいましたら、葉加瀬さんが訪ねた、そして私が住んでいるフィークルをお勧めします。フィークルでは毎年夏に世界中から参加者が集まるアイルランド音楽のフェスティバルも開催しています。
フィークルについてはぜひこちらのページもご覧になってください。
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