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アイリッシュ/ケルト音楽の演奏には装飾音/装飾音符が欠かせません。
このページではアイルランドの伝統音楽で使われている「ロール」や「カット」などの装飾音について解説しています。
「カット」は一番よく使われる装飾音符です。
音と音を「分割」するために使うので「カット」といいます。
厳密に言えば「装飾」のために使うのでなく、音の「分割」のために使っています。
例えば下の曲を弾くとします。
1小節目に「ミララ ミララ」、3小節目に「シミミ ミレシ」と同じ高さの音が2回または3回連続する箇所があります。
このような箇所をフィドルやティンホイッスルで弾くときは以下のように弾くことできます。
「同じ音が連続する箇所」を「小さく書かれた音符の音で分割」して弾くのが「カット」です。
「小さく書かれた音符」の音は譜面に書き表すために便宜上そう書いているだけあって、実際に「レ」や「ラ」で弾いているわけではありません。
実際の演奏では「何の音」でカットするというよりも、指の動作的なところが大きいです。
やり方は人によって異なったりもするのですが、フィドルの場合は薬指か小指で「カット」する人が多いです。
以下はフィドルでの「カット」の入れ方です。
下の動画で曲の中でカットを使っているのをご覧いただけます。
実際のところは「同じ音が連続する箇所」以外のところでも「カット」と同じようなことをやっています。
やっていること自体は「カット」と同じですが、「音と音を分割するため」に弾いているわけではないので、人によって*は「分割のためでないカット」のことを「グレースノート」と呼んだりもします。
* 人によってはカットも含め全て「グレースノート」で通す人もいます。
下は上の動画で弾いている曲の楽譜です。
同じ音が連続する箇所には「カット」が入れてあります。
同じ音が連続する箇所以外のところの「グレースノート」は適当に弾いているので楽譜には書けません・・・
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
以下はティンホイッスルでのカットの入れ方です。
ティンホイッスルでリルティング・バンシーを吹くと以下のようになります。(カット以外の装飾音も使って吹いています)
「ロール」もアイルランド音楽でよく使われる装飾音です。
個人的にですが、フィドルやティンホイッスルをロール抜きで演奏することはまず不可能だろうと思っています。
フィドルの場合は地域によってはロールをあまり使わないで演奏する地域もあります。
私が住んでいたアイルランドの中西部の奏法ではロールをよく使います。
ロールには大きく分けて「ロングロール」と「ショートロール」があります。
ロングロールは読んで字のごとく「長いロール」のことです。
基本的に「ロール」は「カットが長く」なったものと考えると分かりやすいです。
カット同じ高さの音が2つ続く*箇所を「分割」するために使いますが、ロールは8分音符が「3つ分」続く箇所を「分割」する時などに使ったりします。(*基本的に8分音符が2つ続く箇所。そうでない場合ももあります)
ロールの場合は「3つ分」であって、必ずしも同じ音の高さが「3つ続く」ところとは限らないのがポイントです。
「カット」と同じように同じ音が連続しなくてもカットと同じやり方で「グレースノート」を入れるように、「ロール」をただ単に装飾のために使うこともあります。
以下はフィドル弾くときのロングロールの入れ方です。
ロングロールを譜面に書くと以下のような感じになります。
譜面にするとむしろ分かりにくくなってしまいます・・
装飾音は「楽譜で見た通り」に弾くのではなく、『耳で聞いた通り』に弾いてしまう方が早いです。
私的には「ロール」は「カット」を上と下から付けるものと思っています。
例えば上の譜面の一番上の段の一番左側の「ラ,」の音から始まるロールであれば、「ラ,」の音をド,とソ,でカットしていると考えて弾いています。
「ソ,」の部分のことを「タップ」と呼ぶ人も居ます。
下の動画で曲中でのロールの使い方をご覧いただけます。
下は上の動画で弾いている曲の楽譜です。
「~」のところでロールを入れます。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
以下はティンホイッスルでのロールの入れ方です。
ティンホイッスルでフィドルと同じ曲を吹くと以下のようになります。
長いロールがあれば短いロールもあります。
短いロールのことをショートロールと呼びます。
ロングロールは8分音符3つ分の長さの音を装飾しますが、ショートロールは8分音符2つ分の長さの音を装飾します。
カットも同じ高さの8分音符の音が2つ連続する時に使いますが、ショートロールは4分音符1つのところで入れることが多いです。
ロングロールを使った演奏例として挙げた「The Kid on the Mountain」の演奏でも「4th Part」の4分音符の「ソ'」のところでショートロールを使っています*。
*2回目の繰り返しの最後の「ソ'」のところ
下の動画はショートロールの入れ方です。
ショートロールの音の並びを譜面に書くと以下のようになります。
長いロールと短いロールがあるのであれば、太いロールがあってもいいと思うのですが、
残念ながら(?)アイリッシュ音楽で使われる装飾音としては「太いロール(fat roll/thick roll)」と呼ばれるものはないようです。
アイリッシュのロールには太いロールがありませんが、普通のロール(?)には太いのがあるようです。
下の画像は「梅月堂」という和菓子屋さんで売られている「太すぎるロール」というロールケーキです。
直径16cmの極太ロールです。
カットされたフルーツの装飾が見た目と味を引き立てています。
普通サイズのロールと比べるとこんな感じです。
「トリプレット」は「3連符」のことです。
フィドルの演奏では「bowed triplet」と呼ばれる「ゴシゴシ」した感じの入れ方がよく知られています。
日本でアイリッシュのフィドルを弾いている人の中には「トリプレット = ゴシゴシ感のある三連符」と思っている人もいるようですが、私自身がアイルランドで習っていた時は、3連符は全て「トリプレット」として教わりました。
以前にアイルランド人の著名なフィドル奏者が日本でワークショップをやった時も、「ゴシゴシ」していなくても、3連符であれば「ここにトリプレットを入れられる~」みたいに説明していました。
ちなみに英語でトリプレットといえば「三つ子」のことを指します。(三つ子 = 三兄弟ということで、だんご3兄弟を載せているのは、ここから来ています)
ゴシゴシ(5454)した感じのトリプレットは以下のような感じで入れます。
トリプレットを譜面に書くと以下のようになります。
ゴシゴシしていないトリプレット(笑)を入れる時は下のような感じで弾きます。(あくまで私自身の場合ですが・・・)
以下はトリプレットを使った演奏例です。
トリプレットとあわせてショートロールも使って弾いています。
上の動画で弾いている曲の譜面です。
下の動画では「ゴシゴシ」していないトリプレットを弾いています。
動画で弾いている曲の譜面です。
「グリッサンド」は音を滑らせるように上げたり、下げたりする弾き方です。
厳密にいえば「グリッサンド」ではなく「ピッチベンド」がという言い方が適当でしょうか。
アイルランドの音楽では特に正式な呼び名はないような気がします。
「スライド」と呼ぶ人もいるようですが、「スライド」と言ってしまうと曲のタイプのスライドと混同する可能性があるので私はスライドとは呼ばないようにしています。
以下の動画ではグリッサンド or ピッチベンドを使って弾いています。
上の動画で弾いている曲の楽譜です。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ティンホイッスルでは指孔の上で指を滑らせるとフィドルと同じようなことができます。
同じ曲をティンホイッスルで吹くと以下のようになります。
「ロール」や「カット」などの装飾音はフルートでも使います。
以下はフルートでの入れ方です。
フルートに関しては専門外なので参考程度にご覧ください。
装飾音を五線譜に書くと以下のような感じになります。
下の動画では「カット」のところで出てきた「リルティング・バンシー(Lilting Banshee)」をフルートで吹いています。
次はフィドルとティンホイッスルでも弾いている「The Kid on the Mountain」という曲です。
次は「Drowsy Maggie (ドラウジーマギー)」というリールの曲です。
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