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Galtymore Co. Tipperary/Limerick 919m
[ 南北アイルランド全32県の最高峰を登る旅]
ギャルティモアとも(ガルティモアとも)はティペラリー*州とリムリック州の最高峰です。
*現地の人の発音だと「ティペレアリー」に聞こえないこともないです。
山頂に両州の県境が通っています。
標高は919メートル、フィートに換算すると3015フィートです。
アイルランドやイギリスでは3,000フィートを越える山は一目置かれています。
日本でいうところの「3,000メートル級の山」といった感じでしょうか。
ガルティモアはアイルランドにある3,000フィートを超える山としては最も低いので、入門向けの山としてよく登られています。
ギャルティモア山の登り方は何通りもありますが、私は北側の登山口から登ってみました。
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ギャルティモア山はティペラリーとリムリックに跨がって聳えるギャルティー山脈の一角を成す山です。
アイリッシュ通な方は「ギャルティー(Galtee)」と聞いてピンとくるかもしれません。
テスコやダンズストアなどで下の画像の商品を見た方も多いのではないでしょうか。
「Galtee」はチーズなどの乳製品やアイリッシュ・ブレックファストに欠かせないプディングのブランド名としてもお馴染みなのです。
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ギャルティモア登山口までの道のりは色々だと思います。
何処から登るかによっても異なります。
クレア州方面(リムリック、ゴールウェイなど)からであれば一旦リムリック(市)に出てリムリックからN24を通ってティペラリー*を経由してくるのが無難です。
ティペラリー町に着いたらR664という道に入ります。
R664沿いに進むとスリーヴナマック(Slivenamuck)という丘*を越える峠道に入ります。
スリーヴナマックへの道すがらにある、ティペラリー駅。
リムリックジャンクションとウォータフォードを結ぶ路線が通っています。
線路側に踏切が下りていますが廃線ではありません。アイルランドでは列車が通らない時間帯は線路側に踏切を下ろします。
スリーヴナマックの峠を越えると長い下り坂になります。
下り坂の途中に大きなヘアピンカーブがあります。
標識にもヘアピン(Hairpin)と書いてあります。
上の写真と撮った時期が異なるのですが、これが峠道のヘアピンカーブです。まさにに"ヘアピン"のごとくカーブしています。
ヘアピンカーブのところには「クライスト・ザ・キング・スタチュー(Christ the King Statue)」という大きなキリストの像が立っています。
像は1950年の"聖年"を記念して建立されたそうです。
像の先に見えているのがギャルティー山脈の山並みです。
ここから眺めるギャルティー山脈は本当に綺麗です。
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R664の終点はT字路になっていてR663と合流します。
R664からR663に入って左に進んで最初の交差点を右に折れて、突当りを右に折れて進むとギャルティモア山への登山口に着きます。
北側の登山口からのルートは歩き始めてしばらくは舗装された道を歩きます。
何もないようなところですが、道沿いには農家のお宅が何軒かあります。
運のいい人はかしこいワンコ(番犬)のお出迎えを受けたりすることがあるかもしれません。*
念のためトレッキングポールを片手に歩のが吉でしょう。
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アイルランドで一番怖い動物は実は犬だったりして・・
アイルランドの山には熊や猪など人を襲う動物はいません。スズメバチや蛇*、といった人に危害を加える生物もいません。*セイントパトリックがアイルランドから蛇を追い払ったので(笑)
もし人を襲う可能性のある動物がいるとすれば、それは犬なのです。
アイルランドの田舎の農家さんは大抵犬を飼っています。ペットしての役割も果たしているのかもしれませんが、大半は羊や牛を追うための使役用として飼われています。
ほとんど場合放し飼いなので、農家さんの家の前を通りかかると勢いよく吠えてくることがあります。吠えられるだけならいいですが、場合によって追っかけてくることもあります。
人に飼われているので話せば分かる(?)のでしょうが、初対面の人間に対しては激しく威嚇してくるものも多いです。稀に噛まれたなんて話も聞くので、用心のために田舎を一人で歩くときは棒切れかアウトドア用品店などで売られているトレッキングポール(ストック)を持っておくと便利です。
犬が追っかけてきたら棒を振って威嚇して追い払いましょう。
ギャルティー山脈へと続く道。舗装されているといっても辛うじて舗装されて程度なんですが、こんな所にも住んでいる人が居るんです。
ここで舗装された道が終わります。上の地図で黄色の細道の終わりのところです。この先は放牧地帯となります。門のところに「私有地」と書いてありますが、入ってしまって大丈夫です。
基本的にアイルランドの大部分の山は私有地です。
ウィックローやコネマラの山などで、国立公園に指定されている山以外は、個人によって所有されていることがほとんどです。
アイルランド最高峰のキャラントゥールも実は地元の農家さんの私有地なのです。
もし持ち主の農家さんに会ったら、山を登りに来たんですと断ればOKです。ただし犬を連れて入るのはまずいので、犬を連れての山歩きは避けた方がいいでしょう。
舗装された道路が終わると放牧地へと入っていきます。
放牧地なので、そこらじゅうで羊が草を食んでいますが気にせずに歩きます。
牧草地帯に入ると道らしい道はないので、とにかく上の方を目指して歩きます。
アイルランドでは登山道の整備されていない山は珍しくありません。
推奨ルート通りに歩くと、まずはギャルティベグ(Galtybeg)という799メートルの山の山頂を目指します。
これがギャルティベグ山頂。特に山頂であることを示すものは何もありませんが、一等高くなっているので登れば分かると思います。
ギャルティベグの頂上に出ると左手(ギャルティモアを進行方向にして)にBorheen Loughという湖が見えます。読み方はボヒーン・ロック?とかでしょうか。。
前に見えるのがギャルティモア山です。
一旦ギャルティベグに出てしまえば、あとは尾根伝いに歩くだけです。
途中のコルのからの最後の登りがキツいといえばキツいです。
コルのところは切り通しの崖になっていて、下に湖が見えます。
下を覗くのはちょっとスリルがあるかもしれません。
ギャルティベグとギャルティモアの間のコルのところの切り通しの崖。
下を覗くと見えるのがLough Diheenという湖。読み方はロック・ディヒーン?ダイヒーン?あたりでしょうか?ボヒーンだのディヒーンだのこの辺の湖の読み方は一体どうなっているんでしょう??
コルを抜け最後の斜面を登り終えると広々とした尾根の上にでます。
ギャルティモアの山頂はこの尾根の上にあります。
ギャルティー山脈は基本的にどこも泥炭質で柔らかい地面です。
天候によっては歩きにくいこともあると思いますが、幅の狭い箇所もなければ、岩だらけのガレ場もないので、安全といえば安全な山だと思います。
ここがギャルティモアの頂上です。山頂には十字架が立てられています。
山頂から登ってきた方を振り返って眺めるとこんな風に見えます。
一番前に見えるのがギャルティベグです。
その先にも山が連なっています。
ギャルティ山脈は東西約25kmに渡って連なる山脈です。
中にはギャルティ山脈内のすべての山を歩き通す強者もいるそうです。
ギャルティー山脈のある地域一帯は「グレン・オブ・アハーロウ (Glen of Aherlow)」と呼ばれています。
アイルランドの伝統曲に同名の曲があるので、アイリッシュミュージックが好きな方でピンと来る方もいるかもしれません。
この曲はこのギャルティー山脈が位置するティペラリー州出身のフィドル奏者「ショーン・ライアン*」によって作曲されました。
*日本にもよく来るティンホイッスルのショーン・ライアンとは別人です。
ギャルティモア山から望むグレン・オブ・アハーロウの眺め。
前のスリーヴナマックの丘とギャルティー山脈に挟まれ、谷間(グレン)となったエリアがグレン・オブ・アハーロウです。
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下山するときは元来た引き返してもいいのでしょうが、所謂推奨ルートだとギャルティモア山の西側のSlievecushnabinniaを経由して下るルートが一般的です。
Slievecushnabinniaの読みはスリーヴコシュナビニアかな・・?
ギャルティモア山からSlievecushnabinnia山への下りの途中にカラ湖(Lough Curra)という湖が見えてきます。
前方には万里の長城を彷彿とさせるような長い石壁が見えてきます。
この石壁は19世紀に建てられたもので、当時この山の土地を所有していた2軒の農家の境界線として築かれたそうです。
Slievecushnabinniaから見上げるギャルティモア山。
意外と傾斜があります。
同じくSlievecushnabinniaから見上げたギャルティモア山山頂。
Slievecushnabinnia山の鞍部まで下りたら、北側に向かって下ります。
このケルンのある所が目印です。
Slievecushnabinniaの斜面には道らしい道はありませんが、このような道しるべ立てられています。
道しるべに沿って下りると、砂利道に出ます。
砂利道はこのエリアの植林帯管理用の道です。
写真は下り終えて合流した林道から眺めたギャルティモア山です。
この道に沿って歩くとスタート地点の登山口へと戻ることができます。
林道の途中にあった廃墟のような建物。
煙突は何のためのものなんだろう??
林道には伐採された木が積まれていたこともあります。
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私自身はガルティー山脈の山に都合5回登っています。
上に載せた画像のほとんどは7月のある日に登った時に撮ったもので、この山に登った5回の中で一番天気に恵まれた時の写真です。
アイルランドに限ったことではないと思いますが、山の天気は変わりやすく、山の麓が晴れているからといって山の上も晴れているとは限りません。
登り始めは晴れていても、頂上に着いたらガスられたなんてことはしょっちゅうあります。
下は1月にこの山に登った時に撮ったものです。
雪化粧をしたギャルティー山脈を撮りたかったので登ってみたのですが・・
クライスト・ザ・キング・スタチューの像が立ってるいるところから眺めたギャルティー山脈。
山の上は厚い雲に覆われていますが、麓は晴れています。
コンディションとしては絶好の登山日和なのですが・・
登山口の駐車スペースの近くの林道。ガチガチに凍っています。
こんな寒い冬の朝でも地元の農家さんはトラクターに乗ってお仕事に。
この日はCush山から登るルート(上の地図の青い線のルート)で登ってみました。前方の山がCush山です。
Cush山の斜面の途中から振り返って麓を眺めると
麓の方は良く晴れています。なので山の上の方も期待していたのですが・・
でっかいつららが出来ているところがありました。
アイルランドでつららを見る機会は少ないです。
進んでも進んでも辺りは真っ白。八甲田山の行軍もこんな感じだったんでしょうか?
そうこうしているうちに取り敢えず無事に頂上に到着。
とはいっても見事に何も見えません・・
頂上には他にも登って来ている人達が居てびっくり。
私以外に2~3パーティー、5~6人は居たと思います。
頂上に着いたら速攻で下山。これはギャルティモアの隣のSlievecushnabinnia山の鞍部にある石壁。
Slievecushnabinnia山の斜面を下ってくると途中から雪が無くなって、辺りが晴れてきました。
林道の途中から見たギャルティモア山。結局登山中山の上の雲が晴れることはありませんでした・・麓はよく晴れていたのに・・
林道途中の伐採した木が置かれていた所はトラックだかトラクターが通ったらしく、下が沼地状態と化していて超歩きにくかった・・・
林道を歩いていると、前を夫婦?と思われるお年を召したカップルが歩いているのを発見。二人もギャルティモアを登ってきたのか、林道の付近だけを散歩していたのか分かりませんでしたが、仲睦まじく手を取り合って歩く様子にちょっとほっこりしました。
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ちなみに計5回のギャルティ山脈登山の中には失敗登山がこれを含め3回あります。
これは9月のある日に登って頂上で煙に巻かれた時の模様。
この日も麓は晴れていたのですが、尾根に出るなりみるみると厚い雲がやってきて、頂上についた頃にはご覧の有様。
これは7月のある日に逆方向から登ろうと林道を歩いている時に撮った写真。既にこの時点で山の上は真っ白。
この日はさすがに途中棄権しました*・・(*途中で引き返した)
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ギャルティー山脈周辺には手軽に歩けるハイキングコースがいくつかあります。下はその一つのグレン・オブ・アハーロウ自然公園(Glen of Aherlow Nature Part)です。
グレン・オブ・アハーロウ自然公園はクライスト・ザ・キングの像があるヘアピンカーブの所に入り口があります。
色分けされた道しるべが立てられているので道に迷う心配はありません。
緑豊かな森の中を歩くのは気持ちがいいものです。
小川が流れているところもあります。
前に見える道はリムリックとクロンメルを結んでいた旧道です。
ハイキングコースの途中、脇に別荘地のようなエリアが見えてきます。
ここはこの近くにあるホテルのセルフケータリング用の宿泊施設です。
セルフケータリングとは自炊可能な宿泊施設のことです。
貸別荘に泊まっているような感じです。
ギャルティー山脈が綺麗に見えるいいところですね。
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ギャルティー山脈の南側にあるギャルティー・キャッスル・ウッドのウォーキングコースも手軽に歩けるハイキングコースです。
ギャルティー・キャッスル・ウッドも色分けされたルートがいくつか有り、それぞれのルートに道しるべが置かれています。
このコースからは南側のギャルティー山脈の山並みがよく見渡せます。
同じ山でも別の方角から見るとちょっと違って見えて新鮮です。
上の牧場の近くにあった家。こんな人里離れた山の中にも人が住んでいるんですね。すぐ上にギャルティー山脈の尾根が見えます。
コースの中には木々に囲まれた細道もあります。
コースの途中にはテーブルとベンチが置かれているところもあるので、ピクニック気分で歩くのに最適な所です。
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ギャルティー山脈の南側にバリーポリーンという村があります。
似たような名前のお菓子が日本にあったと思うのですが、バリーポリーンで食べてみると美味しいかもしれません。
この村はレーガン大統領の祖先の出身地として知られています。
アメリカにはアイルランドの地を引く人が多く暮らしています。
歴代のアメリカ大統領の中にも、アイルランド系は多くオバマ大統領もアイルランド系アメリカ大統領の一人です。
村のメインストリートにはレーガン大統領ビジターセンターという観光客向けの施設があります。
この写真の真ん中の建物は以前「ロナルド・レーガン・パブ(Ronald Reagan Pub)というパブだったそうです。
レーガン大統領が1984年にアイルランドを訪問した際にこの村に訪れ、このパブのあった建物の前で演説をしています。
ロナルド・レーガン・パブの前で演説をするレーガン大統領
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バリーポリーンの近くには「ミッチェルズタウン洞窟」があります。
このエリアの有名な観光地の一つとして知られています。
ミッチェルズタウン洞窟の見学者用の駐車場。
大型バスも停めれる広々とした駐車場です。
ミッチェルズタウン洞窟の受付。
見た目は普通の家です。洞窟はお宅の私有地なんだそうです。
ファミリービジネスとして洞窟見学を営んでいるって感じです。
洞窟の駐車場からはギャルティー山脈が綺麗に見えます。
洞窟に勝手に入ることはできません。
数人のグループに分かれ、順番に回っていきます。
洞窟の中の撮影は厳禁となっているので写真は撮れませんでした。
洞窟の中の様子は洞窟のホームページで見れます。
中は広いところ、狭いところ色々な所があります。
かなり広い洞窟で実際のところ、まだ探検しつくされていない所もあるそうです。圧巻なのは「バベルの塔」と呼ばれる高い鍾乳石と、コンサートホールを呼ばれる空間です。
コンサートホールは洞窟の中とは思えないほど広々とした空間で、実際に音楽のコンサートが行われることもあるそうです。
洞窟入り口横にある休憩所。自販機もあってどことなく日本の観光地のような雰囲気があります。
ミッチェルズタウンの洞窟のトイレ。
アイルランドのトイレあるあるなんですが、便座がありません。
隅に立てかけてあるのを自分で乗せて使うんでしょうか?
ちなみに男女共用です。
ギャルティーマウンテンの「ギャルティー」はチーズなどの乳製品のブランドとして有名ですが、ミッチェルズタウン洞窟の「ミッチェルズタウン」もチーズのブランドとして有名です。
おまけ
"便座がない"といえば、こんなくだらない替え歌*があったなと・・・
*閲覧される際は自己責任で(笑)