アイリッシュ音楽など民俗音楽やクラシック音楽以外のジャンルで使われているバイオリンの弾き方
このページでは楽器や弓の持ち方、音の出し方など、フィドルの基本的なことを扱っています。
所謂「ヴァイオリン」の初心者向けの基本情報が載ったサイトやブログは多くあるのですが、「フィドル」の初歩の初歩について書かれたものはほとんど見たことがなかったので作ってみることにしました。
当サイトにもフィドルの奏法について色々と解説したページがありますが、初めて楽器を持つところからは解説していません。
今ご覧いただいているこちらのページは、これからフィドルを始める方にも役に立つ内容となっています。
フィドルを始めてみたいけど近くに教えてくれるところがないとか、レッスンに通いたいけど遠くてなかなか行けない、独学で頑張っている方などぜひこのページを参考にしてみてください。
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フィドル(ヴァイオリン)は演奏/練習の前に必ずチューニング(調弦)をしないといけません。
フィドルは基本的に太い方(左側)の弦からG、D、A、Eと調弦します。
Gとは「ソ」の音のことです。Dは「レ」、Aは「ラ」、Eは「ミ」の音です。
4本の弦それぞれを指でどこも押さえることなく、弦だけをはじくと低い方から「ソ、レ、ラ、ミ」の音が出ます。
調弦のやり方には色々な方法がありますが、まったくの初心者の方であれば市販のチューナーを使うのが良いと思います。
フィドルの調弦は、全くの初心者の方の場合最初はちょっと苦労するかもしれません。
調弦のやり方は下の動画を参考にしてみてください。
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調弦をする際は常に駒の角度やゆがみに注意を払うようにすると良いと思います。
フィドルは全ての弦にアジャスターを付けることが多いのですが、アジャスターの回しすぎにも注意が必要です。
アジャスターはあくまで微調整用であって、基本はなるべくペグ(糸巻き)側で調弦した方が良いと思います。
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フィドルは弓を使って弾きますが、演奏/練習の前に弓の毛の張りを調整します。
弓の毛はネジで張ったり緩めたりできるようになっています。
どのくらいの強さで張るかは演奏者の好みですが、あまり強く張り過ぎると弾きにくくなってしまいます。
どのくらいの張り具合が丁度いいかは、下の画像と動画を参考にしてみてください。
練習/演奏しないときは緩めておきます。
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フィドル(ヴァイオリン)は弾く前に弓の毛に松脂を塗ります。
買ったばかりの弓には松脂がまったくついていないので、始めは相当な回数を塗らないと音が出るようになりません。
また新品の松脂は表面がつるっとしていて、塗り込んでもなかなか弓の毛に松脂が付いてくれません。
新品の松脂は使う前に紙やすりで表面を荒らすと塗りやすくなります。
塗る回数は日常の練習の時であれば3往復くらいで十分です。
ステップ①のまとめ
フィドルを練習/演奏する前にやること
① 楽器のチューニング (各弦の音を正しく(GDAE)合わせる)
② 弓の毛を張る
③ 弓の毛に松脂を塗る
フィドルの構え方や持ち方に厳格な決まりはありません。
弾く本人が弾きやすければ、どんな持ち方でもOKです。
弾きやすい = どんな音でも楽に出せるということなのですが、どんな音でも楽に出せるようになるまでは、なんだかんだで苦労します。
画像や動画で「これが絶対正しい」という持ち方を見せることは難しいのですが、初心者の方であればとりあえず下の画像と動画を参考にしてみてください。
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フィドル(ヴァイオリン)は座って弾くこともあります。
アイリッシュのフィドルはどちらかといえば座って弾くことの方が多いです。
楽器の構え方や持ち方は座って弾くときも同じです。
座って弾くときはあまり椅子にどっかりと座り込むような座り方はあまり良くないとされています。椅子に浅く腰掛けた方が良いというのが定説になっています。
弓が腿などに触れないように座ることも大事です。
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フィドル(ヴァイオリン)を弓を持って弾きます。
弓の持ち方にもこれが絶対正しいという持ち方はありません。
大事なことは楽に音を出せるということですから、その辺を考慮すると初心者さんの場合はまず下の画像や動画のような持ち方で持ってみるのが無難だと思います。
以下の画像と動画は持ち方の手順を解説しています。
下の写真に写っているような持ち方にならないようにした方が良いと思います。
ステップ②のまとめ
■ 楽器の持ち方 ■
高く持ち上げすぎない
挟みつけるように持たない
親指の位置、親指をネックから突き出さない
握りしめるようにネックを持たない
etc
■ 弓の持ち方 ■
基本は中指と親指
人差し指は浅すぎず、深すぎず
小指を突っ張らない
etc
楽器と弓を持てるようになったら、いよいよを音を出すわけですが、フィドル(ヴァイオリン)は簡単に音を出せる楽器ではありません。
ピアノやリコーダーであれば、音を出すこと自体は誰にでもできますが、フィドル(ヴァイオリン)は「音を出すための練習」が欠かせません。
音を出す練習にも色々とあって始めから全てをやることはできないので、簡単な所から少しずつやっていきます。
始めたばかりであれば、まずはとりあえず弦を一本擦るところからスタートするといいでしょう。
どの弦を擦るかですが、とりあえずA線が無難かなと思います。
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練習する際はなるべく鏡の前でやるのが良いと思います。
弓は真っ直ぐに動いていないといけないのですが、弾きながら目の前の弓の動きを見て弓が真っ直ぐになっているかどうかを確認するのはとても難しいです。
鏡の前、厳密には鏡の横に立って弓が真っ直ぐに動いているかどうか確認しながら練習するのが良いと思います。
弓を「真っ直ぐに動かすとは」下の画像の真ん中の写真のように弓が動くということです。
両脇の2枚の画像のように斜めになってしまうのはNGです。
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よほどの天才でもない限り、ボウイングの技術を一朝一夕に身につけることはできないと思います。
最初からあれもこれもを「ちゃんとやろう」としなくても良いと思いますが、ぜひとも「右肘の位置」に関しては始めのうちから気にしていただけるといいかなと思います。
特に一番細い弦(E線)を弾く時や一番太い弦(G線)を弾く時に肘が上がり過ぎてしまうのは、あまり良い弾き方とは言えないと思います。
効率の良い音の出し方やスムーズな移弦(隣の弦から隣の弦へと弓を移動させること)のことを考えると、右肘の位置、高さ、角度はとても重要になってくると思います。
もっとも、これが絶対に正しいという肘の位置もないといえばないのですが、個人的には下の画像や動画で説明している肘の位置が無難なところかなと思っています。
基本的には一番細い弦を弾くときは肘が一番下がった状態になるのがベストだと思っています。E線の肘の高さを基準にそれぞれの弦に弓の毛が届くだけ肘の高さを上げればいいと思います。一番太い弦(G線)では画像のあたりの高さになるか、どれだけ高くなったとしても弓が地面と平行になる高さ以上には上げないのがベストだと思います。
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肘の位置とあわせて練習を始める前に知っておきたいのが「サウンディングポイント」についてです。
基本的に弓の毛が弦のどこかに当たれば音は出ますが、実際の演奏では駒と指板の真ん中あたりに弓の毛を当てるのが一般的です。
駒と指板の真ん中あたりとはどの辺か、それ以外のところで弾くとどうなるか下の画像と動画で確認してみてください。
フィドル(ヴァイオリン)を始めてまず最初にやる練習は音を出す練習です。
始めのうちは「開放弦」だけで音を出す練習をやります。
開放弦とは左手で弦を押さえていない状態の弦のことで、始めのうちは「ド」とか「レ」とか何か音を押さえることはしないで、弓の動きだけに集中して練習をします。
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フィドル(ヴァイオリン)を始めて、一番に最初に音を出す練習になります。
この時点ではただラ(A)の音とレ(D)の音を出すだけです。
曲でもなんでもないので、つまらないかもしれませんが、皆最初はこういう練習から始めるものです。
まず最初にA線から始めます。
先に説明した肘の位置(高さ)と弓の毛を弦に当てる位置に注意して、弓をA線(右から二番目の弦)に置いて、ゆっくり長く真っ直ぐに弓を動かします。
始めのうちは長く弓を使うことは難しいと思うので、使う長さは短めでいいと思います。
使う弓の長さに関わらず、必ず弓が真っ直ぐに動くよう鏡の前(横)で弓の動きをチェックしながら練習してみてください。
この際に一定の弓の長さを一定のテンポで動かした方がいいので、メトロノームを使うと良いと思います。
下の動画ではメトロノームを「60」に合わせて、2拍で一弓を使っています。「60」で速ければもっとも遅くしても大丈夫です。
始めのうちは上の練習を何回も何回も繰り返してやります。
最初のうちはちょっとやるだけでも疲れてしまうということもあると思いますが、動作に馴れるまで根気強く続けることが大事です。
といって、最初から頑張りすぎる必要もないと思います。一日5分でもいいので、継続してやることが大事だと思います。
A線と合わせて隣のD線の開放弦でも同じように練習します。
上の練習に馴れてきたら、他の弦(G線、E線)でも同じ練習をしてみるといいと思います。
上の動画ではほぼ弓を端から端まで長く使っています。
フィドルはいつもいつも同じ弓の長さを使って弾くわけではありません。
「音」には2分音符や4分音符など色々な長さの音があります。
フィドルの演奏では弓の長さを使い分けて、短い音、長い音を弾き分けます。
当然、練習の時も弓を使う長さを色々と変えて練習します。
最初からあれもこれもは出来ないので、長く弓を使う練習をしたら、今度は半分の長さで弾く練習をします。
弓の半分の長さのことを「半弓(はんきゅう)」といいます。
半弓には3種類あります。
① 上半弓(弓の中心から先端寄りの半分の長さ)、
② 中(半)弓(弓の中心寄りの半分の長さ)、
③ 下半弓(弓の中心から根本寄りの半分の長さ)です。
上半弓のことは先半弓、下半弓のことは元半弓とも呼ばれています。
実際のフィドルの演奏では先端寄りが使われることが多いのですが、練習の時は全ての半弓の使い方で練習します。
下の動画では上(先)半弓と元(元)半弓で弾いています。
メトロノームは「60」に合わせて、一つ一つの音を四分音符で弾いています。(メトロノームの音一回につき音を一個弾く)
音を出す練習の一環として一緒にやりたいのが移弦の練習です。
移弦とは隣同士の弦の間を行ったり来たりする弾き方です。
移弦ではスムーズさが求められます。
右肩の動きが大きすぎたり、右肘や右腕の動きが硬いとスムーズに移弦ができません。
スムーズな移弦ができないと、2本の弦の音が混ざってしまったりして、雑音混じりの演奏になってしまいます。
移弦の練習をする際は「右肘の位置(高さ)」のところで説明した肘の位置に気をつけて弾くといいと思います。
動画の中では長く弓を使って弾いていますが、弓の長さを半分にしてみたり、使う弓の長さを色々変えて弾いてみるといいと思います。
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移弦の練習の際に合わせてやりたいのが、スラーでの移弦の練習です。
「スラー」とは一弓で複数の音を弾くことです。
フィドルの演奏では弓を一回動かした時に複数の音を連続して弾くような弾き方をすることがあります。
アイリッシュ・フィドルの奏法では基本的にスラーは一弓で複数の音を弾くことです。
他のジャンルの音楽では「スラー = 滑らかに弾く」という意味もあるようですが、アイリッシュ・フィドルでは特に「スラー=滑らか」だけではありません。
どのみち「スラー」で弾けば嫌でも「滑らか」になるのですが・・・
参考までにスラーでない弾き方と、スラーの弾き方を聞き(見)比べてみてください。
いかがでしょうか。スラーがどういうことかお分かりいただけたでしょうか?
このスラーは先ほどの移弦の際も使います。
スラーで弾くのは簡単ではないので、全くの初心者さんの場合、今のこの時点で出来るようにならなくてもいいのですが、とても大事な技術なので、できるのであれば早い段階で取り入れてもいいと思います。
下は一弓でD線からA線、A線からD線へと弾くスラーによる移弦の練習です。
ステップ③のまとめ
・鏡の前で練習
・右肘の高さに注意
・サウンディングスポット (弓の毛が弦に当たる場所)
・弓をまっすぐに動かすこと
開放弦で、
■ A線とD線を長い弓で弾く練習、
■ A線とD線を短い弓(半弓)で弾く練習、
■ 移弦の練習とスラーで移弦の練習
が出来たら、とりあえずこの辺りで一度左手を使った練習してみてもいいと思います。
ボウイングもまだまだ完璧には出来ないと思いますが、完璧になるまでボウイングの練習だけやっていたら日が暮れてしまいます。
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音の場所を覚える練習の前に、弦の押さえ方を確認しておくと良いと思います。
上の画像のような押さえ方がだいたい基本的な押さえ方になると思います。
指を立てすぎず、寝かせすぎず、他の弦に触れることなく押さえられることが基本です。
下の画像では悪い押さえ方もご覧になれますので参考にしてみてください。
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弦の押さえ方とあわせて"指の開き方"も確認しておくといいと思います。
弦を押さえる時に、指と指を開かないといけない時があるのですが、指を開くといっても横に開くのではありません。
下の動画で指の開き方をご覧になってみてください。
指の開き方が確認できたら、いよいよ音階を弾いてみます。
音出し練習 ①
上の動画の練習をする前に爪を短く切っておくといいでしょう。
フィドルは爪をよく切っておかないと、爪が指板(指を押さえるところ)や隣の弦に触れてしまい、弾きにくくなってしまいます。
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上の練習が出来たら、同じ指使いでスラーで弾いてみます。
スラーとは複数の音を一弓で弾くことです。
ここでは2つの音を一弓で弾いてみます。
どうしてもスラーが難しいようであれば、後回しにしても良いと思いますが、試せるようであれば試してみるといいと思います。
1弓で2つの音を弾くので、一つずつ弓を返した時の倍の速さで弾いています。(メトロノームの速さは一緒です。メトロノームの1カウントにつき2つの音を弾いています。)
このスピードが速すぎるようであればもっと遅いスピードで練習すると良いと思います。
ここまでやってみて、とりあえず何か曲を弾いてみたいと思う方もいらっしゃると思います。
本当はまだまだやらなければいけない練習が沢山あるのですが、基礎練習ばかりでは飽きてしまうので、この辺り何か曲を弾いてみても良いと思います。
アイルランドの伝統曲の「Níl na Lá」という曲であればここまでやった練習の内容で十分に弾くことができます。
「Níl na Lá」はもともとはアイルランド語で歌われる歌の曲で、アイルランドでは子供の頃に習うことが多いそうです。
ちなみにアイルランドの有名な女性グループ「ケルティック・ウーマン」が同名の歌を歌っていますが、こちらの「Níl na Lá」はケルティック・ウーマンが歌っているのとは違う曲になります。
下は同じ曲の歌詞付きのものをアイルランドの人に歌ってもらったものです。
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上の「Nl na Lá」を弾いたら、同じ曲の別の弾き方のバージョンも弾いてみるといいと思います。
こちらのバージョンではスラーが出てきます。
スラー付きの方はマット・クラニッチというアイルランドのフィドル奏者が書いた教則本に載っています。
その前に出てきた「Níl na Lá」はキャスリーン・ネズビットという同じくアイルランドの著名なフィドル奏者が書いたフィドルの教則本に掲載されています。
キャスリーン・ネズビットの教則本で一番最初に弾く曲がこの曲で、マット・クラニッチの教則本では2曲目に出てくるので、現地でも初心者向けの定番曲として知られているようです。
ステップ④のまとめ
弦の押さえ方に注意
指の開き方に注意
ここまでかなりざっくりと進めてきましたが、フィドルの演奏をするためには学ばなければいけないことが山ほどあります。
ここで再び楽器の基礎的な練習の戻りたいと思います。
フィドルで自由に音を出せるようにするためには、ボウイングの基本練習を欠かすことができません。
ボウイングの練習は基本的に何も押さえない開放弦でやります。
面白い練習とは言えないですが、良い音を作っていくためにもぜひ日々の日課として続けたいものです。
下の動画の練習は弦を一本ずつ弾く練習です。
最低限このくらいの練習はやっておいて損はないと思います。
練習④は長い音(2分音符)と短い音(4分音符)が出てきます。
4分音符は2分音符の半分の弓の長さで弾きます。(2分音符を全弓で弾くのであれば4分音符は半弓)
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上の基本練習と合わせて、同じことを重音で弾く練習も出来るといいと思います。
重音とは「音を重ねて弾く」ことで、弦を2本同時に弾いて鳴らします。
フィドルの演奏では弦を2本同時に弾くことが頻繁にあります。
そもそもフィドルをチューニング(調弦)するときも、普通は弦を2本ずつ弾いて音を合わせます。
それだけに早い段階で弦を2本同時に綺麗に鳴らせるようになっておいて損はないので、このような練習を取り入れるのはとても良いことだと思います。
※動画の中の「練習④」は四分音符&八分音符で弾いています
開放弦を重音で弾ければ、音階も重音で練習してみると良いと思います。
重音で練習すると音の場所を覚えるのが早くなります。
隣の弦に指が触れないように押さえないといけないので、左手のフォームが綺麗になっていきます。(左手のフォームが綺麗でないと重音を綺麗に弾けない)
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ここまで左手を使った練習は「メジャースケール」しか弾いていませんでしたが、マイナースケール(短調)の指使いの練習もやってみたいと思います。
マイナースケール(短調)とは所謂「暗い感じ」、「悲しい感じ」に聞こえる音並びのことで、実際にこの指使いで弾くとそのような感じに聞こえてきます。
この場ではマイナースケールとしましたが、指使い的にはマイナースケール以外にも使います。
下の動画ではA線とD線で弾いていますが、他の弦(G線、E線)でもやってみるといいと思います。また一つ前でやった重音でやってみるのもいい練習になります。
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ここまでやってきた左手の練習では薬指までしか使っていませんが、実際のフィドルの演奏では小指も使います。
ここまでやってきた指使いの練習に馴れてきたら、小指を使う指使いもやれるといいと思います。
といっても小指を使うのはなかなか難しいので、じっくりと取り組んでみるといいと思います。
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ここまでは音階といっても弦を一本ずつ、音階を半分ずつでしか弾いていません。
ここからは「ドレミファソラシド」をドからドまで行って帰ってくる一オクターブの音階を弾いてみます。
実際にはレの音から始まる「ドレミファソラシド」、即ち「ニ長調(Dメジャー)」*の音階になります。
*「レ」の音から始まる「ドレミファソラシド」
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同じニ長調の一オクターブの音階をスラー(1弓で2つの音を弾く)で弾くのもいい練習になります。
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この練習はボウイングの練習も兼ねた練習になります。
「ボウイングの基本練習 - 日々の日課」のところの「練習 ④」の弓の使い方で音階を弾きます。
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この練習も左手だけでなくボウイングの練習としても有効です。
2長調の音階をやや変則的なスラーで弾きます。
馴れないうちは弓の順番に戸惑うかもしれません。
アイリッシュのフィドル奏法によく使われるパターンなのでぜひ練習しておきたいものです。
ここまでやってきた練習はぜひとも最低限の日常の日課として続けてみるといいと思います。
まだまだ全ての課題を完璧には出来ないかもしれませんが、出来るようになるまで続けることが大事だと思います。
ここで再び、右手関係の基礎に戻ってみたいと思います。
弓を真っ直ぐに動かすための基礎的な練習や、腕の重さを意識した弾き方などについて知っておいて損はないと思います。
あまり最初のうちから理論づくめになってしまっても面白くないので、私的には始めたての頃はとりあえず演奏の質には拘らず、ざっくりとでいいのでどんどん先に進めていって、ある程度楽器に対しての「耐性」がついてきた辺りから、理論的なことを学んでもいいのではないかなとおもっています。
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フィドルを弾くときの右腕の動きは、
・運弓中(弓を動かしている間)は手の甲が自分の顔の方を向く
・腕を動かすのはひじから先
が基本だと思います。
よかったら下の画像と動画で右腕の動き方をご覧になってみてください。
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フィドルの演奏中の弓の動きは、駒(ブリッジ)に対して常に平行に動いているのが基本だと個人的に思っています。
「ステップ③ - ① 音を出す練習」の所にも載せましたが、基本的な弓は下の画像の真ん中の写真のようになるのが標準だと思います。
弓を真っ直ぐに動かすというは簡単そうに見えて以外と難しいものです。
以下の動画でやっているようなことも、ボウイングの基本的な動きを学ぶのに役に立つと思います。
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フィドルのボウイングでは人差し指の使い方も大事です。
アクセントの付けたり、音量を増す時などは人差し指の使い方による所が大きいです。
マット・クラニッチというアイルランド人フィドル奏者が書いた教則本の中にも「アイリッシュ・フィドルの演奏の特色は人差し指の使い方が大きな貢献を果たしている」と書いてあります。
参考になるかどうか分かりませんが、私は下の動画ような感じで人差し指を使っています。
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アクセントを付けたり、音に艶を与えたりする際に人差し指を使いますが、弓そのものが持っている重さ自体も利用しないと意味がありません。
弓を摘み上げるような感じで持ったり、握りしめて持ってしまうと、弦にかかる弓の重さが半減してしまい、張りのある音が出しずらくなってしまいます。
弓を持たない(摘まみ上げない、握らない)で、弓の重さだけで弾くと、弓の重さがダイレクトに弦に伝わる感覚が分かると思います。
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人差し指や、弓の重みを使った弾き方に加え、腕の重みを使うことも大事です。
腕の重みが使えていない = 弓を空中浮遊させて弾いているといっても過言ではなく、空中浮遊のボウイングで張りのある音を出すことは相当難しいと思います。
私自身が腕の重みを意識したボウイングの練習をする時は下の画像&動画のように三角巾を使ってやっています。
あまり一般的なやり方でははないかもしれませんが、個人的にはそこそこ使えると思っています。
腕の重みを感じさせるために、右の脇の下に紙を挟ませて練習させる先生*もいます。
*私の一番最初のフィドルの先生がそういう教え方でした。
壁に肘をよりかけて弾くのも、腕の重みを使って弾くのに役立ちます。
「ステップ⑥」では弓の動かし方、腕の使い方など「右手側」に関連したことを取り上げましたが、ここでは左手側の基礎について掘り下げてみようと思います。
「フィドルの持ち方、構え方」とのところでフィドルの持ち方についてざっくりと説明しましたが、指で弦を押さえる動作が加わると、左肘の位置や左手の親指の動きも大事になってきます。
左肘や左手の親指が適切な位置にないと、特定の音に届かなかったりします。(特に太い弦や小指で押さえる音など)
下の画像と動画で左肘の位置と親指の動きを確認して見ると良いと思います。
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フィドルの指使いは
「指と指を閉じて押さえる」
「指と指を開いて押さえる」
この2つの動きが基本的な動作となります。
音と指使いの関係では「閉じて押さえると半音」に、「開いて押さえると一音」という関係になっています。
一音というのは簡単に説明するとピアノの鍵盤の「白い鍵盤から白い鍵盤*」ということになります。半音は「白い鍵盤から黒い鍵盤、黒い鍵盤から白い鍵盤」ということになります。
*実際は「白い鍵盤から白い鍵盤」で「半音」になるところもあります
フィドルは指4本で弾きますので、指4本で出来得る「指の型」というのが決まっています。
要はその「指の型」と「音の配列」がリンクできれば、どこからでも音階が弾けることになるので、どんな調の曲でも弾けるということになります。*
すぐに分からなくてもいいのですが、この指の型と音の並びについて意識してみると良いと思います。
*「初めての音出し練習(左手編)」で「テトラコード」ということについて少しふれているのですが、「指の型と音の並び」の関係には「テトラコード」が深く関わってきますので、この辺りもどこか片隅に留めておけるといいかもしれません。
以下はアイリッシュ音楽の演奏でよく使われる「指の型」です。
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以下はフィドルの運指表です。
運指表とはどこを押さえたら何の音が出るかを表したものです。
今すぐに全ての音の場所を覚える必要はありませんが、ゆくゆくは全て覚えられるようになると良いと思います。
ここからは練習曲になります。
ここまでやってきたことが出来ていれば、簡単に弾けると思います。
ここまでやってきたことが出来てなくても、弾いていいと思います。
新しいメロディを覚えるのも大事な練習なので、基礎的な練習と平行してアイルランドの伝統曲をどんどん弾いてみてください。
「Báidín Fheidhlimidh」はもともとアイルランド語の歌詞のついた曲です。
Báidín Fheidhlimidhの歌詞付きの譜面です
「Fáinne Gael an Lae」はマーチというタイプの曲ですが、始めたばかりのうちはエアのように弾くこともよくあります。
「Kerry Polka」は「ポルカ」というタイプのダンス曲ですが、始めたばかりのうちはゆっくりでいいので丁寧に弾くように心がけた方がいいと思います。
この曲は「Kerry Polka」という名前以外に「Egan's Polka」や「Peg Ryan's Polka」という名前でも知られています。
アイルランドの伝統曲は一つ曲で色々の名前を持つのは珍しいことではありません。
ある楽譜集にある曲が「〇〇」という名前で載っていても、別の楽譜集では同じ曲が「△△」という名前で載っていたりすることはよくあることです。
同じ曲をやや早く弾くとこうなります。
「The Munster Cloak」は四分の三拍子の曲です。
この曲では左手の小指を使います。
この曲は「マズルカ」というタイプのダンス曲として弾かれることもあります。
次に練習する曲はト長調の曲です。
ト長調(Key of G)とは「ソ」の音から始まる音階「ドレミファソラシド」のことです。
ト長調の音の並びは「ソラシドレミファ#ソ」で、ファに#(シャープ)が付きます。
曲の練習をする前にト長調の音階練習をやっておくと良いと思います。
音階練習をする時は下の音階を「ステップ⑤」でやったような「スラー」、「弓の長さを使い分ける弾き方」、「変則的なスラー」のパターンでも弾いてみると良いと思います。
「Eibhlín, a Rún」はもともとはアイルランド語の歌の曲です。
「Eibhlín」はアイルランドの女性の名前です。英語で綴ると「Eileen (アイリーン)」になります。
「Dálaigh’s Polka」はポルカのリズムを持った曲です。
「Dálaigh」はアイルランドの男性の名前です。
この曲は「Aドリアン」という調で弾かれます。
「Túirne Mháire」はアイルランド語の歌の曲です。
この曲は8分の12拍子で書かれる「スライド」というタイプのダンス曲と似たリズム感を持っています。
「左手の基本練習 - 音階 (ニ長調 - 1オクターブ - 変則的なスラーで)」で出てきた「変則的なスラー」はこの曲を弾くときに使います。
「Mháire」はアイルランドの女性の名前で、英語だと「Mary」になります。
Túirne Mháireの歌詞付きの楽譜
「Planxty Irwin」は盲目のハープ奏者/作曲家「オキャロラン」によって作曲されました。
ハープ(竪琴)はアイルランドの国の紋章にも使われているアイルランドを代表する楽器です。
次に練習する曲はイ長調(Aメジャー)の曲です。
イ長調(Key of A)は「ラ」の音から始まる音階「ドレミファソラシド」のことです。
イ長調の音の並びは「ラシド#レミファ#ソ#ラ」で、ドとファとソに#が付きます。
曲の練習をする前にイ長調(Key of A)の音階練習をやっておくと良いと思います。
音階練習をする時は下の音階を「ステップ⑤」でやったような「スラー」、「弓の長さを使い分ける弾き方」、「変則的なスラー」のパターンでも弾いてみると良いと思います。
下はイ長調(1stポジション、2オクターブ)の音階練習と運指表です。
次に練習する曲はハ長調(Cメジャー)の曲です。
ハ長調(Cメジャー)とは「ド」の音から始まる音階(ドレミファソラシド)のことです。
譜面に書くときはシャープやフラットが一つも付かない調がハ長調です。
曲の練習をする前にハ長調(Key of C)の音階練習をやっておくと良いと思います。
音階練習をする時は下の音階を「ステップ⑤」でやったような「スラー」、「弓の長さを使い分ける弾き方」、「変則的なスラー」のパターンでも弾いてみると良いと思います。
下はハ長調(1stポジション)の音階練習と運指表です。
「Dá bhFaighinn mo Rogha」も、一つ前の曲と同じようにもともとは歌詞のある歌の曲のメロディです。
この曲もポルカに近い雰囲気があります。
ここまでやってきた練習や練習曲がある程度出来るようになってきたら、ぜひジグやリールなどのダンス曲も試してみてはいかがでしょうか。
こちらのページで紹介している曲は初心者向けの曲が中心なので、ステップアップで挑戦してみてもいいと思います。
アイリッシュ・フィドルの魅力は何といっても疾走感あふれるダンスの曲だと思います。
今の時点ではまだまだ速く弾くのは難しいかもしれませんが、練習を続けていればいつか弾けるようになると思います。
練習していて分からないことがあれば、ぜひレッスンを受けて分からないことを分かるように、出来ないところを出来るようにしてみてはいかがでしょうか。
私が教えているレッスンについてはこちらのページでご覧いただけます。
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