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[ウォーターフォードクリスタルの工房、冒険作家ゆかりの町を訪れる]
Knockmealdown Co. Waterford 794m
ノックミールダウン山(Knockmealdown)はウォーターフォード県の北西部に位置する標高794mの山です。
ノックミールダウン山地の山あいにはクロジーン(Clogheen)とリズモア(Lismore)を結ぶ道路が通っていて、途中のザ・ヴィー(The Vee Gap)はこの辺りは有名な景勝地となっています。
ノックミールダウン山の最寄り町のクロジーン(Crogheen)。
こじんまりとした感じのいい町でした。
クロジーンにあった道標。最寄りの町とダブリンとコークまでの距離が書いてあります。ちなみに距離はマイルで表記されています。ダブリンまで120マイルは192kmです。
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まず「ザ・ヴィー (The Vee)」を目指します。クロジーンにはティペラリー・ヘリテイジ・ウェイというウォーキングコースが通っていて、ウォーキングコースを歩いてノックミールダウン山の麓に行くこともできます。(私は車で行きましたが・・)
ザ・ヴィーのところの「ヘアピンカーブ」。ここまで見事に「ヘアピン」状にカーブしているところはアイルランドではそう多くないと思います。
ヘアピンカーブのところに設けてある駐車場からの眺め。
前に見えるのはギャルティー山脈の山並みです。
ザ・ヴィーからの眺め。
ザ・ヴィーのビューポイントのところにあるマリア像
マリア像の隣には寄付金箱が備え付けられていました。アイルランド版のさい銭箱みたいなものでしょうか。
ノックミールダウン山に登るルートはいくつもあるようですが、私は北側のシュガーローフヒル(Sugarloaf Hill)を経由して登るルートで登ってみました。
登山開始地点は先ほどのヘアピンカーブのところに設けられている駐車場になります。近くに「Grubb's Monument」と書かれてある道しるべが立っているので、、そこから登り始めます。
登り始めてしばらく行くと道しるべに書いてあった「Grubb's Monument」が見えてきます。
ここに「Samuel Grubb」という人が埋葬されているらしいのですが、詳しいことはよく分かりません。
シュガーローフヒルへと続く斜面。
道らしい道はないのですが、登山者の往来によって出来たと思われる"道すじ"があるので、道すじの沿って歩くと楽です。
ここがシュガーローフヒルの頂上。頂上にはケルンが置かれています。
標高は663メートル。ここまで来ればあとは大きなアップダウンはありません。
シュガーローフヒルに登るとノックミールダウン山へと至る尾根の上に出ます。尾根伝いに歩けばノックミールダウン山の山頂に出ます。
ここからもうっすらとノックミールダウン山の三角点が見えます。
ここがノックミールダウン山の頂上。山頂には三角点が置かれています。
三角点にはこの山がウォーターフォード州の最高手地点であると書かれた金属板が張られてあります。
ここまでの道のり
麓からの距離は4.66kmでした。
ここで来た道を引き返してもいいのですが、私は尾根伝いにぐるっと回るルートを歩いてみました。
ノックミールダウン山の山頂から尾根伝いに歩きます。
途中Knocknagnauv(655m)、Knocknafallia(668m)、Knockmeal(500m)、Crohan West(521m)の4つのピークを越えていきます。
起伏はほとんどなく、ご覧のようなヒースの生い茂る荒涼とした風景の中を歩いていきます。
左上からKnocknagnauv、Knocknafallia、Knockmeal、Crohan Westのピーク。それぞれのピークにはケルンが置かれているので道に迷う心配はありません。
ノックミールダウン山地にも羊が居ました。
最後のピークのCrohan Westのところは旗がたくさんかかっていて、何やらお祭り騒ぎに。旗はティペラリーの州の州カラーの旗です。
アイルランドには32の州全てにその州の色というのがあります。
青と黄色がティペラリー州の州のカラーとなっています。
この山に登った日の週末にはアイルランドの国技と言われるハーリングの全国大会の決勝があり、ティペラリーは決勝に進出していました。
写真はティペラリーのスーパーバリュー(アイルランドのスーパー)に貼ったあった「頑張れティペラリー」のポスター。
麓から頂上まで旗が掛けられています。
決勝前からお祭りムードになっているのでしょうか?*
*ちなみにこの年のオールアイルランド・ハーリング決勝はティペラリーが優勝しました。
Crohan Westからの眺め
Crohan Westから下り終えると、「イースト・マンスターウェイ(Munster Way)」というウォーキングコースに合流します。
イースト・マンスターウェイはアイルランドに44ある「ナショナル・ウェイマークト・ウェイ (National Waymarked Way)」の一つで、キャリック・オン・シュアからクロジーンにいたる75kmウォーキングコースです。
「ナショナル・ウェイマークト・ウェイ」とは日本の「長距離自然歩道」に相当します。
私が住んでいたフィークルには「イースト・クレア・ウェイ(East Clare Way)」という自然歩道が通っていました。
尾根から降りてイースト・マンスターウェイのウォーキングルートを歩きます。
ウォーキングルートと言っても歩行者専用の道ではなく、この山にある植林樹林の管理用道路です。
イースト・マンスターウェイに合流してしばらく歩くと「リアム・リンチのモニュメント(Liam Lynch 」というラウンドタワーを模したモニュメントがある一画が見えてきます。
リアム・リンチはアイルランド内戦の際に、このノックミールダウン山地での戦闘で命を落とした、反英愛条約派の指揮官です。
このモニュメント1935年に建てられたそうです。
リアム・リンチのモニュメント近くからの眺め。
リアム・リンチのモニュメントを過ぎたら後はイースト・マンスター・ウェイに沿って歩くだけです。
途中こんな森の中を歩いたり、
小川を越えたりして、
無事にゴールに到着。歩いた距離は23.1km 所要時間は6時間35分でした。
ノックミールダウンからR668を南に下るとリズモア(Lismore)の町があります。
グーグルマップでは「リスモア」と表記されているようですが、現地の人の発音は「リズモア」に近いです。
リズモアを代表するランドマークのひとつリズモア城
リズモアのメインストリート
リズモアの町の中心部
リズモアの町中にあった古い道標
リズモアはダーブラ・マーフィーという有名な女性冒険作家の出身地としても知られています。
ダーブラ・マーフィーは1931年の生まれで現在79歳(2010年当時)。
今もこのリズモアの町に住んでいます。
これまでに20冊以上の冒旅行記を出版していて、80歳を迎えた現在も世界各地に冒険の旅に出ています。
彼女の名を一躍有名にしたのが、彼女が31歳の時にアイルランドからインドまでの自転車の旅を綴った旅行記「Full Tilt. Ireland to India with a Bicycle (邦題: シルクロードを全速力 女ひとりの自転車旅行)」です。
この作品が発表された1960年代半ばに女性一人で自転車で世界を回る旅に出るのはとても珍しかったそうで、世界旅行や冒険旅行に憧れる多くの女性に影響を与えたそうです。
ダーヴラ・マーフィーのアイルランドからインドまでの自転車旅行を綴った本の原書と訳書。
ダーヴラ・マーフィーの愛車「ロズ号」。見た目はほとんどママチャリですね。この自転車でアイルランドからインドまで旅したそうです。
旅の持ち物リスト(原書版)
旅の持ち物リスト(訳書版)
旅の持ち物に.25口径の自動拳銃というのがあります。
基本的にアイルランドでは一般市民が拳銃を所持することができないのですが、インドまでの自転車旅行に際し万が一の備えとして、拳銃を持たせてくれるようリズモアの警察署長のもとに懇願に訪れる様子が作品に架かれています。
こちらは自転車関係の装備品。
電池はライトに使う電池です。チェーンの輪とは自転車のチェーン(盗難防止用ではなくペダルのところから後輪のギアにかけて付いているチェーンです)の予備のコマです。ブレーキ用針金とはブレーキのワイヤーケーブルのことです。
ダーヴラ・マーフィーさんですが、聞くところによると今でも普通にリズモアの町を歩いていたり、町中のスーパーで買い物していたりするというので、私もリズモアに行ったらぜひダーヴラ・マーフィーさんに会いたいなと思っていたのですが、私が行ったときは残念ながら遭遇できず。
リズモアの町から東へ進みウォーターフォード市に向かいました。
ウォーターフォード市はウォーターフォード州のカウンティタウン、日本の県庁所在地に相当します。
ウォーターフォード市向かう途中の道すがらで私好みの橋を発見。
昔の鉄道橋です。レッドブリッジという名前の橋で、リズモアとウォータフォード市を結んでいた鉄道路線で使われていた橋とのことです。
鉄道橋の説明板(クリックで拡大できます)
ブラックウォーター川に架かるレッドブリッジ
こちらはキルマックトーマス村(Kilmacthomas)の鉄道橋。
キルマックトーマス村もリズモアからウォータフォード市向かう道すがらにあります。
なかなか立派な造りをした鉄道橋です。
ウォーターフォードの町に着くと、これまた素敵な橋が・・
これはシュア川に架かるシュア川橋(River Suir Bridge)。
モダンな造りをした橋です。
シュア川橋を渡っている時に見えたのがこの橋。鉄製の長い鉄道橋です。
リズモアとウォーターフォードを結ぶ鉄道路線で使われた鉄橋で現在は廃線となっています。
ウォーターフォード市には素敵な橋がまだあります。
これは町中にあるライス橋(Rice Bridge)。
橋が上に開く構造になっています。開いているところを見たかったのですが、何時に開けるのか分からなかったので、開くところは見れませんでした。
ウォーターフォード駅に停車していたアイルランド鉄道の客車。
ウォーターフォードの町の中心部にあったメリーゴーランド。
常設されているものなのか、移動遊園地が来ていたのかは分かりませんが、町のど真ん中だったので、けっこうな迫力がありました。
味のあるメリーゴーランドですよね。
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ここはウォーターフォード市内のウォーターフォードクリスタルのビジターセンターです。
ウォーターフォード・クリスタルは1783年に同市で創業したクリスタル製品工場です。
英国王ジョージ三世が特別注文したことから貴族や富豪たちに注目され、1851年のロンドン万博で評価されたことからヨーロッパに名前を広めました。
ロンドンのウエストミンスター寺院や、ワシントンのケネディセンターではウォーターフォードクリスタルのシャンデリアが使用されています。アメリカ大統領の就任祝いとして、アイルランド政府から贈られるる品でもあります。
また権威あるスポーツトーナメント(米ゴルフのPGAツアーの優勝トロフィーなど)のトロフィーにも用いられています。
ビジターセンターに飾られていたブライアン・ボルーのハープを模したクリスタル製のハープの置物。弦が張られていますが多分弾けないと思います。
こちらはクリスタルで出来たフィドル(バイオリン)。
値段は13,500ユーロ(約180万円)也。
クリスタルを作る時に使われる道具
ビジターセンター併設のショップでは、色々なクリスタル製品が販売されているのですが、どれも高くて簡単には手が届きません。
ウオーターフォード市のランドマークの「レジナルドの塔」。
10世紀の建てられたもので、漆喰を使った建造物としてはアイルランド最古と言われています。
ウォーターフォード市内の時計塔。1863年に建てられたそうです。