ラグナキリア山(Lugnaquilla)*はウィックロー県の最高峰の山であると同時に、レンスター地方(Leinster)で最も高い山でもあります。
標高は925メートル。アイルランド全体で13番目に高い山です。
*地元の人の発音だと「ラグナクイラ」または「ラグナキーラ」に近い発音に聞こえます。
ラグナキリア山はウィックロー山地に位置します。
ウィックロー山地にはグレンダロック*(Glendalough)などアイルランドを代表する観光地が多数あります。
*グレンダロッホとも
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ラグナキリア登山口への行き方は色々とあると思いますが、私はハリウッド(Hollywood)という村を経由してウィックロー山地へと入りました。
ハリウッド(Hollywood)の綴りはアメリカの有名なハリウッドと同じ綴りです。
ハリウッド村の入り口。
ハリウッド村のメインストリート
アメリカのハリウッドとは違いウィックロー県のハリウッドはとても小さな村ですが、クレアやリムリックなどアイルランドの西側からウィックロー山地に入る時に必ずと言っていいほどよく通る村です。
ラグナキリア山の登山口へと至るグレンマルールの谷を通る道。
この道の終点にラグナキリア山への登山開始地点となるユースホステルがあります。
Lugnaquillaに至る登山ルートはいくつかあるようですが、私は山の裾野の東側から林道伝いに登ってみました。
ユースホステルのすぐ前の道です。実質的な登山道入り口になります。
舗装されているのはここまでで、突当りを右に曲がると砂利道になります。
この砂利道はこの一帯に広がる植林帯管理用の道です。日本の林道に相当します。伐採した樹木を運ぶトラックが通ることもあるため、そこそこの広さがあります。
林道の終点まで来るとその後は沢伝いに歩きます。沢に沿って細道が付いています。
沢伝いの道の途中からの眺め。
山頂へのショートカットルート発見(笑)。お急ぎの方はあちらからどうぞ。
沢伝いの道を登り終えた山の中腹付近からの眺め。
沢伝いの道を登り終えると、平坦な湿原地帯へと出ます。上の地図で青い線が大きくカーブするところ辺りです。等高線の間隔が広がっている所です。
アイルランドの山あるあるなんですが、こういうところには道らしい道はありません。
起伏は少ないのですが、でこぼこしているので歩きやすいとは言えません。
ガイドブックによるとこの辺で"道"に迷うことが多いらしいです。(そもそも道がないんですが・・)
平坦な湿原地帯を抜けると傾斜のある斜面になります。この斜面を登り終えるとラグナキリア山の山頂へ至る尾根に出ます。
登ったのは11月下旬だったのですが、アイルランドにしては珍しく山の斜面につららが出来ていました。
山頂へと至る最後の稜線に出ると一面の銀世界。アイルランドでも高い山では冬場に降雪があることは珍しくありませんが、11月下旬に雪が降るのは稀です。
ちなみにこの写真の中央のやや右に寄った所に、何やら人影のようなものが見えているのですが、これはまさしく人影です(笑)。
私以外にもう2人登っている人達が居ました。
この寒い中ご苦労様と思いましたが、向こうもきっと同じことを思ったことでしょう。
前方の一番高くなっているところがラグナキリア山の頂上です。
頂上までぐるっとカーブする感じで歩いていきます。
ここから先はウィックロー山脈国立公園のエリア外になります。
ラグナキリア山の西側はアイルランドの軍の演習場になっているそうです。
訓練に使うこともあるようで、ガイドブックなどでは注意して登るようにと書いてあります。
実際に演習場に勝手に入って不発弾を暴発させて亡くなったアイルランド人の少年が居ます。
ラグナキリア山の西側は、グレン・イマール・アーティレリー・レンジ(Glen Imaal Artilley Range)というアイルランドの軍の演習場となっています。
アーティレリー(Artillery)とは砲兵隊のことを指します。
ちなみにグレンイマールテリアという、アイルランド産のテリアの名前はここの地名から来ています。
ここがラグナキリア山の山頂です。山頂には三角点が置かれています。
晴れた日にはここからウェールズの山々まで見渡せるそうです。
山頂にあった立て札。注意書きか何かが書いてあるのでしょうけど、凍てついてて読めません。。
山頂で記念撮影。
風が強くて三脚が使えなかったので、自分の影を写してみました。
無事に登山開始地点のユースホステルのところに戻って下山完了。
本日のルート。途中線が2本に分かれているのは、行きはガイドブック推奨のルートを通って、帰りは推奨ルートを通らずにショートカットしたからです。
本日歩いた距離は13.86km、所要時間4時間21分でした。
ウィックロー県を代表する観光地といえば何と言ってもグレンダロックでしょう。首都のダブリンからも近いので、日帰りで来る観光客も多いようです。
ウィックロー県の最高峰ラグナキリア山はグレンダロックの西側に位置しています。グレンダロックもラグナキリア山もウィックロー山脈国立公園の中に位置します。
グレンダロックと呼ぶか、グレンダロッホと呼ぶか。
グレンダロックは日本の観光ガイドブック等だと「グレンダロッホ」と紹介されていることも多いです。
グレンダロック(Glendalough)の"ロック"の部分は「lough」と綴ります。
これはアイルランド語(ゲール語)で「湖」という意味です。
グレンダロックに限らずアイルランドには「lough」が含まれた地名が多くあります。例: ゴールウェイのロックリー(Loughrea)、アーマーのカムロック(Camlough)*
「lough」をアイルランド語として発音すると「ロッホ」に近い発音になります。アイルランド語の「gh」はドイツ語の「ch」に近い発音なので、ドイツ語で「バッハ(Bach)」と発音するときのような、少し鼻にかかったような発音になります。
なので「Glendalough」を「グレンダロッホ」と発音しても間違いではないと思いますが、現地でグレンダロッホと呼ぶ人はほとんどいません。
元々はアイルランド語から来ている地名も、基本的に現地の人は英語化して発音してしまうのです。先ほどの「バッハ(Bach)」だって普通のアイルランド人の人は「バック」と発音します。
というわけでこちらのページではこちらで一般的に呼ばれている「グレンダロック」と表記させていただきます。
ちなみにゴールウェイのロックリー(Loughrea)をグーグルで検索すると「ラウレア」と表記されて出てきます。アーマーのカムロック(Camlough)は「カムラフ」と表記されていました。
私の住むクレアのフィークルはファークルになっていました(笑)。
って笑いごとではないのですが、グーグルでアイルランドの地名を検索するときはお気を付けください。
グーグルマップで表示される、知っている人なら笑えるアイルランドの地名のカナ表記
知っている人なら笑えるグーグルのアイルランドの地名のカタカナ表記です
前置きが長くなってしまいましたが・・(笑)
グレンダロックはアイルランドに来たらぜひ一度は訪れたい場所の一つだと思います。
グレンダロックのラウンドタワー。絵葉書やカレンダーでもお馴染みの場所です。
グレンダロックには手軽に歩けるハイキングコースがいくつかか用意されています。
ブルールートとかホワイトルートといった感じに距離や難易度で色分けされています。
私はホワイトルートを歩いてみました。
グレンダロックのハイキングコース(ホワイトルート)
前半は整備された道の上を歩きます。
コースの随所にこんな道しるべが立っています。道しるべには色分けした矢印があるので、自分のルートと同じ色の矢印が指す方に進みます。ちなみに赤い矢印はレッドルート用の矢印で、レッドルートは一番長いルートだったと思います。
グレンダロックのローワーレイク(lower lake)。グレンダロックにある2つの湖のうちの一つがローワーレイクです。こちらの方がビジターセンター寄りになります。ルートによってはここまで来て引き返すルートもあります。
ここまでなら特別な装備無しに誰でも来れると思います。
途中にこんな沢が流れているところがありました。
ホワイトルートは途中からアイルランドの山によくある湿原地帯を歩きます。他の山だと道なき道を歩くことが多いのですが、ここは木道が通してあるので歩きやすかったです。
この辺りはヒースの花が咲いている時期は綺麗に見えることだと思います。
ローワーレイクとラウンドタワーが見えます。
もうしばらく行くとアッパーレイクも見えてきます。
これがアッパーレイク。一緒にローワーレイク、ラウンドタワーも見えます。
まだまだ木道が続きます。
ホワイトルートはここで川を渡ってビジターセンターの方へ戻ります。
アイルランド各地で展開しているギフトショップで「アヴォカ(Avoca)」というお店があります。
最近日本にも入ってきていますが、アヴォカはもともとは色々なウール製品を手掛けるブランドで、ウィックロー州のアヴォカで創業しました。
1723年に創業したアヴォカの工場は世界最古の毛織物の工場といわれています。
アヴォカ村に至るヴェイル・オブ・アヴォカ「アヴォカ谷の道」
アヴォカ谷を流れるアヴォカ川。
アヴォカ川はウィックロー山脈に端を発し、ウィックロー州のアークロー(Arklow)という町でアイリッシュ海に注ぐ全長56.3kmの川です。
源流から河口まで一つの州内だけを流れる川としてはアイルランド国内で最長です。
GPSを見ながら運転していたら、ミーティングス(Meetings)という場所があるのを発見。「会う」という意味の単語が村の名前なんて面白いと思って車を停めてみましたが、
B&Bとお土産さんを兼ねたパブ(兼レストラン)が一軒あるだけで、それ以外は何もありませんでした・・
この場所は正確には村ではなくアヴォカ村のパリッシュ*(parish)になるそうです。
*日本語に訳すと教区。日本で言うところの「〇〇県〇〇市〇〇」の市の後の「〇〇」に相当します。ここであれば「ウィックロー県アヴォカ村ミーティングス」となります」
このミーティングスという場所は、アヴォカ川の源流となる2つの川が合流する所なので、こういう地名になったそうです。
「庭の千草」や、「春の日と花と輝く」といった有名なアイルランドの曲の作詞をしたトーマス・ムーア(Thomas Moore)が作詞した「ミーティング・オブ・ザ・ウォーターズ(Meetings of the Waters」という曲はこの場所のことを歌った歌だそうです。
色々あったけど(笑)、無事アヴォカ村に到着。
アヴォカ村の入り口にあったお店の壁に飾られていたレトロな看板。
アイルランド版のホーロー看板といったところでしょうか。
ブラッソ(Brasso)は100年以上にわたって販売され続けている金属磨き用のポリッシュです。今でもダンズストアやテスコなど普通のスーパーにも置いてあります。
昔と変わらないデザインのブラッソメタルポリッシュ
日本のピカール金属磨きに似ています。あちらも昔から変わらないデザインが特徴の金属磨き用ポリッシュの代表格です。
日本版ブラッソ?のピカール金属磨き
アヴォカ村のメインストリートにあった井戸
アヴォカといえば何と言ってもアヴォカのハンドウィーバーズ。
ブラッソよりも長い歴史を持つ手製毛織物工場です。
しかしながら私がアヴォカで行きたい所はここではなく別のところだったのです。
写真はアヴォカにある銅山、アヴォカ・コッパーマイン跡です。(Avoca Copper Mine)。
アヴォカは昔は銅の産地として知られ、ここで銅の採掘をしていました。
煙突は銅を精製するための炉の煙突です。
検索すると中を探検した人が撮った写真が出てきます。
トロッコ列車の線路跡とか昔の機械とかが写っていて、廃墟好きにはたまらない場所だと思います。
私も探検しようと銅山跡に入ろうとしたのですが、問題が発生してしまいまして・・
アヴォカの銅山跡は今や羊の放牧地帯となっていたのです。
どこもかしこも羊がいっぱいでおちおち探検していられません。
しかも羊って普通は人間が近づくと逃げていってしまうものなのですが、ここの羊ときたら・・
アヴォカ銅山跡の人懐っこい羊
ここには人を見るなり追っかけてくる羊が居るんです。
最初見た時はえっ犬!?と思ったくらいなんですが、次の動画がコイツが羊であることを証明してくれます。
番犬ならぬ番羊。最後は威嚇されてしまいました。。
というわけでコイツのおかげで銅山探検は無しに・・
アヴォカ銅山の近くには、アヴォカの代表的なランドマークの一つであるモティーストーン(Motte Stone)という大きな石があります。
重さ150トン以上、高さ2.4メートルもある巨石です。
アイルランドの伝説にも登場する石で、伝説の巨人フィン・マックールがウィックロー州最高峰のラグナキリア山でハーリングをしていた時にボールの代わりに使っていたのがこの石で、フィン・マックールが打ちそこなってここまで飛んできたなんて話もあります。
実際は氷河によって運ばれて置き去りにされた"迷子石"というやつのようです。
モティーストーンの上に乗って記念撮影。
モティーストーンの上からの眺め。
アヴォカの南にはウドゥンブリッジ(Woodenbridge)という村があります。
日本語に訳すと「木の橋村」。
村に唯一ある橋はアークロー川に架かるこの橋だけですが石造りです。
木の橋はどこにあるんでしょう??
ちなみにこの村、グーグルで検索すると「ウッドエンブリッジ」と表示されます。
この村にはアイルランドで一番古いと言われるホテル、ウドゥンブリッジ・ホテルがあります。
このホテルはアイルランド共和国の初代首相(taoiseach=ティーショク)であり、3代目の大統領でもあったエイモン・デ・ヴァレラが新婚旅行の際に泊まったホテルとして知られています。